会長×訳あり

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会長×訳あり

「いらっしゃいませ~、ご案内いたします。」 今日も僕はカフェのバイト中。なるべく寮の部屋に帰りたくなくて、バイトをいくつも掛け持ちしている。その中の一つであるここでのバイトは今日が最終日。最近、体調不良でふらふらしている僕を気遣ってオーナーがしばらく休暇を提案してくれたんだけど、それは申し訳なくて…僕から辞めることにしたんです。オーナー夫婦はとてもいい方達で今日も僕を気遣ってくれて…本当に申し訳ない。 「都築くーん、お会計お願いしてもいいかな?」 「はい!!」 「すみません、お待たせしてしまって…えっと料金の方が2600円になりま…えっ」 「え?」 「い、いえ!すみません、2600円ちょうどお預かりします。あ、あの…」 「ん?どうかした?」 「ちょっとお待ちいただいてもいいですか?すぐに戻りますからっ」 驚いたぁー。会計中にお客様の顔を見たらまさかの僕の学園の会長様だった!確かに今日、学園はお休みだけど、まさか街でしかもここで会うとは思わないじゃん。まぁ、僕は会長様のファンではないけど、お見かけする機会は多くて、隠しているだろうけど、その顔色の悪さがいつも気になっていた。 「生徒会の仕事が忙しいのかなー…、よし、これでおっけ~」 実は僕お菓子作りが趣味で、今日も営業時間前にキッチンを借りてお世話になった方に配るためのクッキーを焼いていた。甘い物は疲れにいいって言うし、会長様にも分けてあげよう。 「すみません、お待たせしました。あの、これを…」 「え?これ、、クッキー?俺にか?」 「(わわ、すごい怪訝な表情、、、)あの、お客様がすごく疲れているようなので…疲れた時は甘い物っていいますよね?」 「・・・。」 「(怪しまれている…確かに会長様は人気者だし、よく考えたらこんな知らないやつが作った物は食べたくないか…)すみません、余計なお世話でしたね。ごめんなさい。」 「お前には、あ、えっと都築君?には俺が顔色悪いようにみえるのか?」 「(わわ、ネームプレートみて名前バレちゃった…) え…はい。え?」 「そうか…いや、うん。ありがとう、ありがたくいただくよ。また来る。」 「え…あ、はい。元気になって下さい!ありがとうございました。」 き、緊張したー…。僕、今日でここ辞めるって伝えてないや。ま、会長様は別に僕に会いに来ているわけじゃないからいいか。元気になったかどうか学園で見かけた時にみてみよう。それから僕は、最後のバイトを終えてオーナー夫婦に涙のお別れをして憂鬱な学園に帰ってきた。 「琴君?今日もここで休むのかな?ご飯は?」 「いつもすみません。ご飯は食べてきたので今日もここに泊まっていいですか?」 「僕は全然かまわないけど…こんな図書室の仮眠室じゃなくても…」 「いえいえ、ここが一番落ち着くんです。何か本に守られているみたいで…僕にとっては天国ですよ」 「今日は冷えるから…良ければこれ使ってよ。ま、僕のじゃないけど…」 「わ!勝手に僕なんかが使っていいんですか?」 「いい、いい。琴君が風邪ひかないならブランケットくらいあいつも喜んで貸し出すよ。」 「ありがとうございます。いつも…無理言ってここも貸していただいて…すみません。」 「琴君?僕には何でも相談して。僕の部屋もいつでも貸し出すからね。」 「野々原先輩、ありがとうございます。その時はお世話になりますね。」 side:野々原 はぁー…。琴君、日々顔色悪いし、なんだか痩せてきた気がする。あ、失礼しました。僕はこの学園の図書委員長をしている野々原です。先程から僕が心配している彼…琴君はある時からこの図書室の仮眠室に寝泊まりをしている。事情が事情ですが仮眠室と言っても古本に囲まれた書庫にソファが置いてあるだけの部屋だ。琴君にとっては天国らしいけど、でもいくら天国でもあの顔色…絶対眠れてないですよね。はぁー…、どうしたらいいんでしょ。 また野々原先輩に気をつかわせちゃったな。僕だって自分の部屋があるし、本当はそこでゆっくり休みたい…けどとある事情で部屋に近づくことができないからしょうがない。でもそろそろ限界が近いことも自覚している。野々原先輩にはああ言ったけどご飯はあんまり食べれていない。数週間前から貧血がひどくて…それよりもなによりも眠れない。図書室のソファが悪いわけではなくて…悪夢が怖くて眠れないんです。 「ほんっと僕って弱いなー…ん?」 ふと気づくとシトラス系のさっぱりした匂いの中になんだか甘いような…いい匂い。無意識に抱きしめていたものからとてもいい匂いがした。そういえばさっき野々原先輩が貸してくれたんだった。先輩も誰かから借りた物みたいだけど…すごくいい匂い。僕って変態みたいと思いつつも抱きしめたブランケットに顔を埋めているとなんだか眠気がして…驚くことにそのまま眠ってしまった。 (pi,pi,pi,pi,,,,,,) ぇ、、、朝っ!?うっそ、、、、僕、こんなによく眠ったの4か月ぶり…。きっとこのブランケットのおかげだよね…この香水どこのメーカーだろう?野々原先輩にお願いして聞いてもらおう。何だか体調もいいみたいだし、バイトに行く前に久しぶりに学園のキッチン借りてアレ作ろう!! 「あれ?都築君、今日は少し体調がいいのかな?」 「そうなんです!4か月ぶりによく眠れて…今なら何でもお手伝いできそうです!!」 「ちょっと、逆にそんなに寝てなかったの!?いつもふらふらしてるとは思ってたけど…あんまり心配させないでよ。」 「店長…ごめんなさい。」 「うん、私としても都築君がいてくれて助かってるの。だから無理しないでね。」 「はい!!」 すっきり目覚めたことで気分が上がった僕は、起きてすぐにキッチンでチョコブラウニーを作った。それから野々原先輩のところに行っていつものお礼にブラウニーをプレゼントした。そして理由を話してブランケットをしばらく借りる了承を得た。事情は相手に話してくれるらしい。そして香水も聞いてもらう約束も取りつけて一安心。もう嬉しくて嬉しくて終始笑顔の僕に、野々原先輩も安心したみたいで、、、。やっぱり心配かけていたんだと反省した。それから学園近くの本屋さんのバイトに向かったんだけど、店長も心配してくれていたことを知って、僕はみんなに迷惑かけてたんだと泣きそうになりつつ、仕事で恩返しするために本棚の整理をしている。 「くーっ、あと少しが届かないぃぃ」 「ほら、これでいいのか?」 「えっ!あ、ありがとうございます!助かりま…あっ!!かい、、、じゃなくてカフェのお客様!」 本棚整理中に高いところの書籍を取ろうとしてるんだけど身長がすこーーーし足りなくてあと少しで届かない。脚立を取りに行けばいいんだけどなんだか負けた気がして、、はぁー… 深いため息を吐いた時に聞いたことがある声がした。そして僕の後ろからすっと手を伸ばして書籍を取ってくれた方をみて驚いた。な、なんと会長様じゃないですか!以前カフェで会った時よりも顔色は良いみたいでよかった。 「やっと見つけた…何でカフェにいないんだよ…」 「へ?あ、えっと、実はあの日がバイト最終日だったんです。僕、諸事情で体調が悪くて、、それで一旦辞めたんです。」 「それならそうとあの時に言ってくれよ。マスターも全然教えてくれねぇし…、それで体調は大丈夫なのか?」 「ぼ、ちぼち?」 「はぁ?仕事してていいのかよ。」 「いや!えっと…バイトなんですが、、、今日は体調がいいので大丈夫…です。」 「都築君からもらったクッキーで俺は元気になったから、改めてお礼に行ったらいねぇし、、、それからいろいろ探したけど全然見つからねぇ…たまたま用事でここに立ち寄ったらあっさり見つかるし…はぁー」 「僕別に逃げてない、、、です。でも会、、、お客様が元気そうでよかったです。」 「そりゃ、あれからもうすぐ半年たつしな。都築君は逆に…」 「はは、面目ない。あ、そうだちょっと待ってて下さい …お待たせしました、これよかったら貰って下さい。」 「え?」 「今日はチョコブラウニーです。味は自信がありますよ~」 「俺よりお前の方が食べた方がいいんじゃね?」 「ふふ、今日たくさん作ったんです。お客様にも、、、これ食べてまた仕事頑張って下さい。」 「ありがたく貰っとく。ありがとう、、、それと、よければ俺のことはお客様じゃなくて名前で呼んで欲しい。高城 仁だ。」 「高城さん?わかりました。」 「…あぁ。後、、、次、いつ会えるかわからねぇから、その…少しだけ抱きしめてもいいか?なんか元気貰えそうな気がするし。」 「え!?僕を!?ま、高城さんがよければ…よしっ!!ギューーー!!元気出してくださいぃぃ!!」 「ははっ、なんだそれ、、、色気ねぇな」 「元気ずけるのに色気なんていりません~、、、、あの、一つ聞いてもいいですか?」 「ん、なんだ?」 「あの、高城さんのつけてる香水ってどこのメーカーですか?すごくいい匂いで…」 「ああ、これはな俺の会社で製造してるやつで、まだ非売品なんだ」 「そうなんですね…残念。すごく落ち着きます…」 「そうだ、、、、、ほら、これやるよ。使いかけでわりぃけど、、、」 「えっ!?いいんですか!?」 「今度新しいの持ってきてやるよ。それまではそれで我慢してくれ。いつものお菓子のお礼な」 「ありがとうございます!!」 ちょっと多めにチョコブラウニー持ってきててよかった。会長様が僕を探してくれていたことには驚いたけど、同時に僕のことがバレてなくて安心した。さすがに学園の生徒全員は把握してないよね。そして野々原先輩にお願いしていた会長様の香水を本人から手に入れてしまった!!どうしよう、、、これで不眠症とお別れできる!嬉しい!!! この時の僕は数日後に悪夢が起こるなんて想像もしていなかった。 会長様に香水を貰ってから数日…場所は相変わらず図書室の仮眠室だけど本当によく眠れている。野々原先輩に、バイト先で会長様に会ったことを伝えた時には凄く驚いていて、いろいろ聞かれたけど、最終的には元気になってきたことを喜んでくれた。会長様はふらっと本屋に来てくれて、なぜか最後には抱きしめてくれて学園に帰っていくという謎の状況が続いている。なんでも元気がでるとか…僕にはよくわからないな。 「琴君?本当に大丈夫ですか?なんなら僕が取ってきますよ?」 「着いてきてもらえるだけで助かります。今は授業中だからアイツは部屋にいませんよ。」 「わかりました、ここで待ってますね」 「ありがとうございます!すぐに取ってきますね」 今日は野々原先輩に付き添って貰って、僕の寮部屋に私物を取りにきていた。本当は二度と来たくなかったけど…学業で必要な物を取るために意を決して、、、といっても授業中だけど。さ、先輩が待ってるから早く戻らないと! 「あっれ~?誰かと思ったら都築君じゃ~ん!どうしたの~?やっと戻ってきた感じ~?俺、待ちくたびれたんだけど~?」 「ヒッ、な、なんでっ」 「あぁ~今、授業中?寝坊しちゃった~。ていうか、授業中を狙って来るなんて酷くない~?俺と都築君の仲じゃん~あ、授業中に来たのってもしかして誰にも邪魔されないようにするためだったり~?え~都築君のエッチ~」 「や、やだっ、近づかないで!」 「酷い~!でもこの前はあと少しで邪魔がはいったからね~。せっかくだし続きしよ~」 「嫌っだ!!助けてっ…(パシッ)  っ痛…」 「今度は逃がさねぇよ。静かにできるよね~?じゃないとまた殴っちゃうかも~」 「うう~…」 「ははっ、やっぱ都築君かわいいわ~。さ、イイことしよっか~」 「やめてっ、脱がさないで!嫌だぁ~」 「ねぇねぇ、あれから誰かとヤったりした~?ココ触らせてないよね~?」 「やっ、触らないで!」 「答えてよ~、じゃないと…」 「や、やだやだぁ!!痛いぃ。指抜いてよっ」 「あはは~、この反応は処女だね~。今から卒業だよ~」 僕の馬鹿っ!変な意地はらずに野々原先輩の提案を大人しく聞いてたらよかった…せっかくみんなのおかげで少し元気が出てきたのに、、、自信が持てるようになってきたのに、また僕はコイツに邪魔されるの?………嫌だ!諦めたらダメだ!バイト先のいろんな人達が、野々原先輩が、そしてなによりいつもパワーをくれた会長様が…みんなが今まで応援してくれたのに僕自身が諦めたら、、どうにかしたいけど怖い、、、 「都築く~ん?気持ちいい~?」 「もうやめて下さいっ…あなたは潤平君の彼氏でしょっ!?」 「確かにそうだけど~、目の前に可愛い子がいたらみんなそっちにも手を出すでしょっ!」 「ぁあぁー、指抜いて…っ」 「嫌だよ~やっと2本目なのに~、ははっ、嫌嫌言ってるけど~前、勃ってるじゃん~」 「やめてっ、触らないでっ!やだっ!ううぅ、、、っ、、ふっ、、」 「かわいい~!固くなってきたし、そろそろイきそ~?ほらほら~、先とかきもちくない~?」 「やだぁ!こんな、、、イきたくないっ」 「そうだよね~やっぱり後ろに挿れてから一緒にイきたいよね~」 「ち、違っ!」 「まだ柔らかくなってないから痛いかもだけど~我慢してね~」 「や、やだっ!助けてっ!誰か!!高城さんっ!!助けてっ!!」 (ガシャーーン) 「琴君?大丈夫?すごい音した…お前っ!何してんだっ!琴君から離れろ!!!」 「野々原先輩っ!!!気づいてくれてありがとうっ…っ」 「琴君!?チッ、とりあえず琴君を休ませないと…お前の処分は追って下す。それまでは自室で待機しておけ。」 もうダメだって一度は諦めたけど、何故か会長様の顔が浮かんで…廊下で待ってくれてるのは野々原先輩なのに、会長様の名前を叫んでた。叫ぶと同時に思いっきり投げたクッションがコップに当たって落下した。その割れた音が野々原先輩に聞こえたみたいで心配して中に入って来てくれて助かった。安心した瞬間意識がなくなった。先輩には汚いものを見せちゃったな…。僕、ヤられる一歩手前、、、というかヤられたも同然だよね。そう思うと自分自身がとても汚い物に思えてしまった。 「琴君?大丈夫、、なわけないか。起きれるかな、どうかな?」 「野々原先輩、、、、ぁ、先輩っ!汚い物見せてしまってごめんなさいっ!本当にごめんなさい…」 「琴君!?どうしたの?琴君は何も悪くないでしょ!怖かったね、、、知らせてくれてありがとう。さ、ホットミルクでも飲んで落ち着こう」 「やっ!触ったらだめっ!」 「っ、、え?どうしたの?」 「僕に触ったら汚れちゃいます。触ったらダメです。」 「こ、琴君…?」 「もう僕には高城さんに会う資格も、元気づける資格もありません…。もう、、、っ」 「琴君!!」 野々原先輩の部屋で数日お世話になった僕は、図書館の仮眠室に閉じこもるようになった。本屋のバイトも続けることができず、また会長様に何も言わずに辞めちゃった。また探してくれるかな?でももう会う資格ないや…。会長様に貰った香水も僕なんかが使ったら穢れそうで、あの日から使うことができない。それどころかあの落ち着く匂いが違うものの様に感じて使うことができない。野々原先輩は心配して食事を届けてくれるけれど、少し食べたら吐き気がきて…全然食べることができない。体力が落ちたからか今日はなんだか熱っぽくて…ソファから起き上がることもできない。そんな僕を見た野々原先輩は医務室に連れて行くって言ってたけど僕が拒否した。この部屋からでることが怖い。すごく怖いんだ。それを伝えると風邪薬とゼリー飲料を買ってきてくれて、冷えピタも貼ってくれた。野々原先輩すごく心配してる、、、前回の時も今回も先輩には迷惑ばかりかけてる…。 「先輩、僕、生きてる意味、、、ありますか?」 「何言ってるの!?当たり前でしょ!!僕もだけど、なによりアイツが!!仁が琴君を大切に思ってる!今も、いなくなった琴君を探してるんだよ!」 「会長様が…でも僕はもう会えない。もう……」 「とりあえず今はゆっくり休んで熱下げよう。」 「あ、コレ…このブランケット、」 「これね、仁のなんだよ。僕が借りてきたんだ、、、ほら温かくして。何も考えないで眠ろう。」 side:野々原 やっと眠ってくれた。無意識かな?ブランケットをしっかり抱きしめてる…。せっかく元気になってきてたのに。また、前の状態に、、、いや前以上に最悪な状態だ。琴君は何も悪くないのに、ましてや穢れてなんてない!!でも僕がなんと言っても琴君には届かない。どうしたら…。最近は食事も摂れてなくて、目に見えて痩せてきた。寒い季節も相まって風邪ひいて熱まで…。医務室に連れて行こうと促したけど震えが止まらなくなって…トラウマは相当だ。仁は仁で本屋を急に辞めた琴君に対して最初は凄く怒ってたけど、今はまた一生懸命探してる。「前回は半年かかったからまた時間かかるだろうけど絶対見つけ出してやる。」って…。何でこんなに惹かれあってるのに…仁だったら琴君を救える?仁だったら琴君の支えになれる?………僕は、僕だけが2人を繋ぐことができるじゃないか!!よしっ! 「失礼します。仁、いるかい?」 「あー!ののだー!会長いるけど、いつも通りキノコだよー、会長――!!ののが用事だってー!」 「キノコって…」 「だって雰囲気がジメジメなんだよ。ま、仕事してくれるからいいけどー」 「当たり前だろ、、仕事サボったらあいつに顔見せられねぇしな…で、何だよ渉、用事って…場所かえるか」 「うん。ブランケットの彼のことなんだけど…」 「あ?お前が気にかけてる奴だっけ?それがなんだよ?」 「仁に頼みがあるんだ。彼を、、琴君を助けてほしい。彼を救ってあげて…」 「は、はぁ?どうしたんだよ渉?泣くなって、、、さっきブランケット渡しただろ?」 「このままだと琴君、死んじゃう…僕じゃ救えないんだ。」 「そんなの顔も知らねぇ俺の方が救えねぇだろ…。」 「…………仁は琴君を知ってるよ。よく知ってる。」 「はっ!?誰だよ…親衛隊か?」 「琴君の名前は―…都築、、、、都築 琴って言ったら意味わかるよね?」 「な、何っ!?」 「そう…仁が探してる人が、、、仁の想い人が今にも死にそうなんだよ!!だからお願い!琴君を助けて!図書館の仮眠室で寝てるから…お願い」 「くそっ!後で詳しく聞かせろよ!!」 「ののー?会長どうしたの?めっちゃ走ってたけど、喧嘩したー?」 「違いますよ、、、そうですね。キノコ卒業ってところでしょうか。」 「えー!それって!!」 side:野々原 言った。ついに仁にバラしてしまった。でも、もう仁にお願いするしか琴君を救う方法が思いつかなかったんだ。これで上手くいきますように。2人が元気に幸せになれますように。 side:仁 「っ、、都築…?おい、、、やっと見つけたぞ?お前、、辞める時はちゃんと教えろよ…なぁ?…っ、このブランケット、、、これだけがお前の支えだったのか?ごめんな…もっと早く見つけられなくて、、、ごめん。」 全力で走って来た仮眠室でみた光景はなかなか信じられなかった。ソファで寝てる彼は熱があるためか呼吸が速くて…いや、そんなことじゃねぇ。そんなことじゃなくて……しばらく見ねぇ間にどうしたんだよっ。何でこんなに痩せて、窶れてさ、、、何だよ、何があったんだよ…。とりあえず俺の部屋に移動させねぇと。抱き上げた身体は滅茶苦茶軽くて、いつも抱き締めていた都築より一回りも二回りも小さい気がした。こんな寒いところじゃ、治るもんも治らねぇ。都築を自室に運んで、楽な服に着替えさせて……後はひたすら、看病した。その間に渉に電話して聞いた内容に俺は、今すぐにソイツを始末したくなった。と同時に、自分も大変な時に俺の体調不良に気づいてくれて、いつも元気づけてくれていたのかと思うと、泣きたくなった。 「ん…ぁ、、れ?仮眠室、、じゃない…ぇ、、なんで、、どこ、、、ここ、、っ」 「(ガチャ)…え!?都築、目が覚めたのか、すごい震えてどうした!?」 「ぃゃ、、、仮眠室に戻りたい、、、お願い…怖ぃ、お願い、、、っ」 「都築っ!俺が分かるか!?今回も見つけるのが遅くなっちまったけど、ちゃんと見つけたぞ!?」 「ぁ、、会長様、どし…て?」 「俺は渉と、、、野々原と友人なんだ。そんな渉が泣きながら都築を助けてくれって俺にお願いしに来たんだ。まったく…気づいてたならもっと早く教えろって話だよな…でも助かった。また都築に会えた。もう今回は無理かもって思ってた…。なぁ、また抱きしめて…「ダメっ、、です!!」…え?」 「ダメです、、僕に触ったら会長様が穢れてしまいます。もう僕にはあなたにあげる元気もありません…ごめんなさい。」 「都築…、どうしたんだよ、俺が元気貰いすぎたのか?なぁ…」 「ごめんなさい、、、ごめっ…」 「すまねぇ…喋りすぎた。また後で話そう、今は休もうな。」 会長様は一生懸命僕の看病をしてくれた。食べてもすぐ吐いてしまうのにいつも胃に優しいものを作ってくれて、悪夢に魘された時は優しく抱きしめてくれた。その時にも直接触れると僕が気にするからってブランケットを間に挟んでくれて…なんでそこまで、そんなにしてくれてももう僕は何も返せないのに。数日たっても体調が戻らず、いよいよベッドから起き上がるのも辛くなってきた。もう僕、死んだ方がマシなんじゃないかな?生きててもこの人に迷惑がかかるだけ…。 「会長様…」 「ん?どうした?気分悪いか?」 「僕、きっとこのままだと死んじゃいますよね?」 「…え?死ぬわけねぇだろ」 「でも僕もう立てない…。ご飯も食べれないし眠れない、、、僕何のために生きてるの?もう死にたい…いなくなりたいんです。」 「そんなの許さねぇぞ!!お前は俺を救ってくれた!今後は俺が…必ずお前を救ってやる!!」 「…っ、、、ふぅ、、、ぐすっ、、ぅ」 「だから諦めるな…絶対に諦めるんじゃねぇ」 「っ、、ごめ、なさぃ…」 side:仁 死ぬなんて絶対許さねぇ。そんなこと考える都築にもイライラするけど、そんなこと考えさせてる俺自身にもイライラする。どうしたらいいんだよ!どうしたら元気になってくれるんだよ…。俺はコイツに救われた、、、誰も俺の体調なんて気づいてくれなかったが、初対面のコイツは気づいてくれて、甘い物は疲れた時にいいってクッキーをくれて元気づけてくれた。クッキー…そうか。よしっ!それから俺は、渉に都築のことをお願いしてキッチンに来た。料理長に無理言ってクッキーの作り方を教えてもらって、何とか完成した。 (コンコン) 「都築?ちょっとお茶飲めそうか?」 「はい、、、大丈夫です。起きますね」 「いや、そのままでいい。少し背中起こすな。」 「すみません…」 「ホットミルクと、、、コレ…」 「ぇ…これって」 「形悪いだろ?都築みたいに上手にできなかったけど…初めてにしては、、な?」 「僕の、、、僕の為に…?」 「あたりまえだろ、料理長に頼んでやっと完成したんだ。…食べてくれるか?」 「で、でも吐いちゃうし…それにもったいない。」 「吐いてもいいし、また作ってやるよ。一口でもいいから食べてほしい…元気を込めて作ったんだ。」 「え…?」 「お前が俺にくれたクッキー覚えてるか?あれ食べたら不思議と元気になったんだ。だからお前にも、、、都築にも元気になって欲しくて、、、一生懸命作ってみたんだ。」 「ふっ…美味しい。本当に、僕なんかに…なんで、、なんでそこまで、、、」 「あのカフェで出会った時からずっと気になってた。都築 琴のことが好きだ。俺と付き合ってくれるか?」 「嘘…だって僕、、、、そんなこと言ってもらうような人間じゃない、、です。」 「俺が今、お前に言ってるんだ。他の誰でもないお前に」 「僕汚いですよ、、、いいんですか…」 「お前は汚くも穢れてもねぇよ。なぁ、抱きしめてもいいか?」 「っ……(こくっ)」 「あぁーー!!久々だわっ!やっと抱きしめられた。もう最後から半年以上たってるってわかってるか?」 「はい…ごめんなさい。」 「いいさ。絶対見つけるつもりだったし…で?付き合ってくれるよな?」 「うっ…」 会長様から貰った香水の匂いが、違うものに感じるようになってからずっと使うことが出来なかった。今、半年ぶりに会長様に抱きしめてもらって久しぶりに香ったあの匂いはあの時と変わらず、僕に安心感をくれた。そこで初めて気づいた…この人は… 「僕はずっと不眠症で、、、でも野々原先輩に借りたあのブランケット…会長様のブランケットの匂いがすごく安心できて。あの時から僕はずっと救われていました。でも今回、あの匂いに頼ることができなくて…一人になったみたいで寂しかった。でも今、、、、会長様に抱きしめてもらって気づいたんです。僕が、、、僕をいつも救ってくれていたのはあなたの香水の匂いなんかじゃなくて、、、会長様…高城さん自身だったんですね。」 「俺はそんな大層なことしてねぇよ。お前からしたらストーカーみたいなもんだろ。」 「高城さんのために僕、元気になります。そして美味しいクッキーを焼かないと…。」 「じゃあ…」 「こちらこそよろしくお願いします。」 「ありがとう…。ゆっくり元気になろうな。」 それから、まず食事を少しずつだけど食べれるようになって、運動も少しずつ始めた。焦り過ぎて倒れたこともあって、会長様だけじゃなく野々原先輩にも怒られた。少しずつ、少しずつ回復していった僕はクッキーを焼いてみた。一時は生の観念が薄れた時もあったけど、何とか趣味が楽しめるくらいまで回復したのは間違いなく会長様のおかげだ。そんな彼にクッキーをプレゼントしたら喜んで、泣きながら抱きしめてくれた。この優しい人を不安や悲しみで泣かせることがないようにゆっくり元気になります。 「仁、いつもありがとう。仁のおかげで僕はいつも幸せです。」 「俺の方こそ…いつも元気をありがとう、、琴」
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