0人が本棚に入れています
本棚に追加
先程までの自分が恨めしい。こんなものが、明日の自分だと諦めていたのだ。
此処にはいたくない。
こんなものが、人間であるものか。
此処に甘んじるくらいなら死んだ方がマシだ。
私は、こんな負け犬になど落ちてなるものか。
「さて。交番はどこだろう」
何か身分の分かるものがあればいいのだが。
当時は、まだスマフォなどなく。
結局、その後、三時間程かけてようやく落し物を届けることが出来たのだ。
我が事ながら難儀な性分だと自覚した。
だが、後悔は無かった。
私は、やはり人間なのだと確信出来たのだから。
何とでもしてやる。
私はまだ、自分を諦めてはいないのだから。
「君、面白いね。よく馬鹿って言われない」
ふと後ろから声をかけられた。
もっとも、今の私に価値などあろうはずも無く勘違いだろうと思い直した。
「あ〜、もしもし?そこの君?ちょいと背の高い、半日前まで猫背だった君だよ」
成る程、勘違いではなさそうだ。
が、その声に覚えは無く、ここで振り向くのは早計だと思えた。
「あ、無視だ。無〜視〜だ〜。いいよん。勝手に勧めるから、興味持つまでついていくから。君に選択肢とか全然ないから」
最初のコメントを投稿しよう!