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うつくしい花が咲き乱れるころ、ふたりで公爵家を訪れた。 「久しいな、公爵殿。先々月の大会議以来か」 「ご無沙汰しております、殿下。その節はたいへん貴重なご意見を賜りましてありがとうございました」 「さて、このたびお邪魔したのは、アンジェリカ嬢のことについてだ」 「はい。わたくしどもには、殿下さえよろしければ、チェンバレンの名を差し上げる用意がございます」 婚約者として、ゆくゆくは公爵家当主になるものとして殿下を迎え入れる。 そのために中立の立場を捨て、殿下の派閥につく。後ろ盾になるから娘をよろしく、ということだ。 決めてきたのだろう言葉を淀みなく言った父に、ルークさまは困ったように笑った。 「生憎、私の名はただでさえ長いのでね、これ以上はいらないんだ。アンジェリカ嬢を女公爵にするというのはどうだろうか」 「いくらなんでもそれは無理がありますわ」 わたくしには功績も名声もない。公爵としてやっていけるだけの教養もない。 父の顔が凍りついたのにたまりかねて、思わず口をはさんだ。 きり、とすぐに鋭い視線が飛ぶ。黙っていなさい、という父の目配せだった。 「殿下、おそれながら申し上げます。わたくしはあなたさまに、この名かこの身、もしくは少しばかりの財しか、差し上げるものを持ちません。お望みでしたらそのすべてを差し上げます。……ですから、かなうのでしたら、娘のしあわせを願いたいのです」
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