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『あなたと話をするたび、どんな関係もひとりの持ち分はたったの二分の一だということを、いつも思い知らされるよ』 どうぞご随意に、と答えたわたくしに、この方はけして身分を振りかざさなかった。 その誠実さにこたえようと——いいえ。この方が好きだと思ってお受けしたのに、わたくしは身分のせいで無理に頷いたなどと思われてはたまらないわ。 「わたくしは、それほど愚かに見えますでしょうか」 「いいや。あなたは聡明でいらっしゃる」 「ありがとう存じます」 もう、いやですわ、ご存じありませんでしたの。 「随分前から、わたくしの心の半分は、あなたさまがお持ちですのよ」 「……アンジー」 はい、ルークさま、と呼ぼうとした呼び名の半分も音をのせきらないうちに、手を強く引き寄せられて唇を奪われた。息継ぎごと壊れるような口づけだった。 もう少し初心者に手心を加えてほしい。 こちらは、ルークさまが笑うだけで、心臓がおかしな音を立てているくらいなのよ。 ああ、やはりあなたは赤が似合うなあ、と、最初から目をそらす気のないルークさまが、あまりの恥ずかしさに目を合わせる度胸がなくなったこちらの頬を見て笑った。
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