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俺は篠崎幸。
水商売をしている母親と親1人、子1人の生活だった。
母親はホステスとして夜働いていたが、男を取っかえ引っ変えしては家に連れ込むような人だった。
俺の父親が誰なのか?も知らず、気が付くと母親と新しい男との生活を繰り返していた。
そんな俺が、男から性の対象と見られると知ったのは、小学校1年の夏に母親の何人目かの男に悪戯されたのがきっかけだった。
おそらく母親も知っていたんだろうと思う。
食事もろくに与えてくれない母親が、男に好き勝手された日だけは食事を用意してくれた。ただ身体を触られて、キスを求められるだけだから俺にはその行為の先に何が待つのかなんて知らなかった。
そしてとうとう、その時が来た。
身体中を舐められ、俺自身を咥えられたり、後孔を弄られて恐怖を感じた。
怯えて母親に救いを求めると
「お前の身体、高く売れるんだよ。自分の学費くらいは稼ぎな」
と言い捨てられたが、さすがに泣いて嫌がる俺に無理強いはしなかった。
「お前が男を誘惑するのが悪い!」
と言われ、自宅のベランダに男物の下着が干してある時は、男がいる時だから家には入れなかった。
もし入って、男が俺に興味を持った時は責任を取って抱かれろと言われたのだ。
まだ小学校入りたてでも、それが何を意味しているのかは分かった。
だから必ず、学校帰りに店舗兼自宅になっているボロ屋の2階を見上げ、男物の下着があったら近くの空き地の土管の中で宿題をしていた。
着の身着のままだし、お風呂もあまり入れて貰えなかった事もあり、男子達から意地悪をされて逃げ込んだ場所だった。
鬱蒼と生い茂る草を掻き分け、中に入って寝転んで宿題をした。
そんなある日、俺は陽一と出会った。
その日は学校帰りに、いじめっ子グループに絡まれて泣いていると
「お前ら、弱い者いじめするな!」
って、俺の前に立ちはだかる姿を見た。
その背中は、母親さえも守って貰えない俺にはヒーローのように見えた。
1人で3人を相手に喧嘩して、見事蹴散らしたそいつは振り向くと、太陽の光を浴びて笑顔で俺に手を差し出した。
「大丈夫か?」
勝気な瞳にやけに整った綺麗な顔をしたそいつは、友達の居ない俺でさえ知っている人物だった。
田中陽一
女子に人気があって、勉強はそれ程得意では無さそうだったけど、スポーツ万能で明るい性格から男女共に人気のある人物だった。
いつも人の輪の中に居て、名前の通りに太陽みたいな奴だった。
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