2人の関係

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2人の関係

全て身辺整理を済ませ、引越しが終わった頃に、陽一が引越し祝いに来た。 壁も薄そうなボロアパートで、俺は初めて陽一に抱かれた。 陽一自身は、単純に引越しの手伝いに来たつもりだったらしかったが 「引越し祝い、何か欲しいものあるか?」 と聞かれて、「陽一……」と答えたんだ。 陽一は驚いた顔をして俺を見たけど、俺は構わず陽一の唇にキスをした。 唇を重ね、陽一の整った唇に舌を這わす。 「幸……」 戸惑う陽一の胸に頬を擦り寄せ 「お願い……」 縋る思いで呟くと 「男を抱いた事が無いから、勝手が分からないけど良いのか?」 そう言って腰を抱き寄せた。 返事の代わりにキスをすると、陽一は俺を抱き締めて唇を重ねた。 ずっと欲しかった人。 焦がれて焦がれて、やっと触れて貰えた。 舌を絡め、口腔内を陽一の舌が犯していく。 どうすれば気持ち良くなるのかを知り尽くしたキスが、陽一の今までの肉体関係の多さを物語っていて苦しかった。 でも…………、陽一が男を初めて抱く相手になれた優越感もあった。 学ランを脱ぎ捨て、シャツを脱いで露わになった陽一の鍛え抜かれた身体に欲情した。 性欲なんて無さそうな、鉄壁の表の顔。 そして、自分の立場を有利にする為になら、どんな相手でもその美しい容姿を武器に誘惑する裏の顔。 どの顔も好きだけど、俺にだけ見せる素の陽一を失う恐れより、この時の俺はこの美しい男に抱かれたかった。 触れて欲しかった。 こんなに誰かを渇望したのは、後にも先にも陽一だけだったと思う。 誰も映さない瞳も、厚い壁に覆われた心も、全て欲しいと思った。 自分も衣類を脱ぎ捨て、全裸で抱き合った時には全身が痺れるようになった。 布団に押し倒され、壊れ物に触れるように優しく抱く陽一が愛しかった。 どうすれば俺が気持ち良いのか、確認するように様子を見ながら抱く陽一の配慮を、愛情だと信じたかった。 「幸……」 労わるように髪に触れる大きな手が好きだった。 甘く掠れた声で、俺の名前を呼ぶ陽一の声が堪らなく愛しかった。 初めて陽一を受け入れた時、俺で勃起してくれた事が何より嬉しかった。 男でも受け入れてくれたんだと、そう信じてしまったんだよな……。 そう……。 陽一は、愛の無いSEXを重ねて来た。 だから、どんな相手であろうと、自分を求めた相手を抱く術を持っていただけなんだと、この時の俺は気付かなかったんだ。
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