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片思い
「陽一……お願い……」
俺がそう言えば、陽一は黙って唇を重ねる。
俺は首に手を回し、陽一との愛の無いセックスに身を投じる。
決して冷たくなんか無いし、むしろ優しく丁寧に抱いてくれる。
でも、それが逆に……俺への愛が無いと痛感させられる。
穿つ楔も、荒い呼吸も、熱くなる肌も……、全部、全部、ただ性欲を満たすだけの行為。
陽一の心は手に入らない。
「あっ……あっ……陽一っ……、もう」
俺の切羽詰まった声に応えるように、陽一の腰の動きが早くなる。
「ふっ……ふっ……」
と荒く呼吸する陽一の目は……、肌の熱さに反して冷めている。
「幸……出すぞ……」
そう言われて、頷きながら
「陽一!来て……!俺も、もう……イクッ」
身体が痙攣して、中を穿つ陽一の楔を締め付けると
「うっ……」
と、小さく呻いて陽一が果てた。
「あっ……アアっ!」
俺がイクのを確認すると、陽一は優しく俺の頭を撫でて唇を重ねる。
ゆっくりと俺の中から陽一自身を引き抜き、はめていたゴムを外して処理をしている姿に泣きたくなる。
俺は手を伸ばし、陽一の首に甘えて
「ねぇ……、今日くらいは生でして……」
とお願いしても
「お前が辛くなるだけだから、ダメだ」
そう言われてしまう。
「じゃあ……今夜は帰らないで……」
必死に縋り付く俺に
「幸……」
って困った顔をされたら、何も言えなくなる。
分かってる。
俺と陽一は幼馴染みで親友で……、いつだって求めるのは俺だけで、陽一は俺を求めてはくれない。
「じゃあ、あと1回だけ……」
陽一に縋るようにお願いすると、陽一はそっと頬に触れて
「あと1回な……。あまり遅くなると、翔さんとの食事の時間に間に合わなくなるから…」
そう言われて、唇を重ねる。
一度で良い。
全てを忘れる位に求めて欲しい。
そう願うのは……我儘なのだろうか?
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