隣の芝生に住みたい

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隣の芝生に住みたい

ハヤテの会社は、都心の高層ビルを数フロア貸しきっている 最上階には、ビルの利用者だけが利用できる食堂とカフェがあり、下行きのエレベーター待ちが嫌いなハヤテは、ほぼ毎日その食堂で昼食をとっている 天気のいい日は富士山も見られるほどの絶景だが、今日はあいにくのうす曇りだ 空が暗いと食事の気分も上がらない そこへ来て、隣の4人席に座る他会社の女性グループの会話が耳につく 「でさ、昨日なんて4回だよ?!自分は次の日休みだからいいけどさー」 食堂の賑わいの中ならば、誰も聞いていないだろうとたかをくくっているのか、高くてよく通る声で、会話の内容が周囲に丸聞こえなことには気づいていない 「4回とかマジ無理なんだけど」 「や、それ、高度なノロケでしょ笑」 「違うって~」 悩みなのかネタなのか、女子のノリはわかりづらい ハヤテはお茶をすすった 彼女らが隣に座ってからの会話をハヤテは余すところなく聞いていた 正直、うらやましい ハヤテがコータと最後にしたのなんて、半年前だ 毎週のようにハヤテから声をかけるが、いつも「疲れた」「明日も早いから」「眠い」などと言われてなあなあにされる キスもするし、抱きあって寝るのに、本番は拒否される 『スキンシップだけで十分幸せじゃない?』 などと言われたら何も言えない 「でも、それだけヤッてたら浮気はないでしょ」 「愛されてる証拠だよ」 「そうかな~?体だけって感じがしてイヤじゃない?」 昨日彼氏と4回ヤッた女子社員が、まんざらでもない様子で答えた ハヤテが友人の女性だったら、心がすさんでしまいそうだ 給茶機のお茶は、出がらしのような味けなさで、むなしさが余計に身にしみた ハヤテがトレーを片付けようと立ち上がったとき、 「ここ、いいですか?」 と、声をかける人間がいた 「あ、はい、どうぞ…あっ」 席を譲る相手をハヤテは見たことがあった ハヤテと同じ会社の法人営業部所属の男性社員だ 相手もハヤテを見知っていたようで「あ、どうも」と軽く会釈をした 「お疲れ様です。お先に」 ハヤテが立ち去ろうとするとすると、 「あのっ」 男性がハヤテを引き留めた 「お時間まだあるなら、なんですが、定食にデザートついてるの忘れて余分に取ってしまって…もらってもらえませんか?」 男性のトレーを見ると、焼きプリンが2つのっていた
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