275人が本棚に入れています
本棚に追加
まぬけな俺と賢い彼の推理力
【初対面の人間、誘うか?普通】
と思ったことは口に出さないでおく
よく知りもしない、しかも会社の人間なんて、面倒以外のなにものでもない
オフ会で全く知らないひとと会う方がまだ
マシである
コータと出会ったのもオフ会だったから…
「あ、彼女がいるから無理、かも?」
断る口実としてとっさに出た言葉だ
それを聞いた杣が、クスッと笑った
「やっぱり」
「何がですか?」
「友寄さん、ゲイでしょ?」
「へ?」
「だって、普通、彼女がいても、男同士の付き合いは全然OKでしょ」
いやいやいや
と、完全に否定しきれないのが悔しい
当たらずとも遠からず
というか当たっている
「し、嫉妬深いんです!同棲してるんですが、休みが合わないので、休日は一緒にいなきゃダメって…」
最初の一文以外は真実だ
嘘をつくときの極意は、嘘をつくところは最小限にしておくこと
しかし、ハヤテが30年かけて編み出した極意も杣にはきかなかった
「休みが合わないなら、ハヤテさんは土日はフリーですよね?」
追い詰められた
次の嘘、次の嘘、と考えているうちに、どうあがいても抜け出すのは無理なところまで来ていた
これは本当のことを言うしかない
「嘘です。すみません。本音を言うと、いま初めて話したばかりの人と、休日一緒に過ごすなんてムリゲーっていうか、なにその苦行っていうか、スイーツめぐりは自分のペースで行きたいというか…」
杣は箸を動かす手を止めてハヤテを見つめていた
そーだよね、そーだよね
いきなりこんな早口で捲し立てられて驚いたよね?!
てか、軽蔑したよね?!
ごめんねごめんね
ハヤテは心のなかで叫んだ
すると杣から意外な答えが返ってきた
「なーんだ。本当の理由はそれだったんですね」
「へ?」
「じゃあ彼女がいるってのは嘘ってことでいいですか?」
「え、ええ…?」
「彼氏は?います?」
「だからいませんって!」
「じゃあ問題ないじゃないですか。明日もここでご飯食べて、明後日も食べて、一週間ご飯食べて、仲良くなったら晴れてスイーツめぐりです」
なんて強引な論理展開だろうか
最初のコメントを投稿しよう!