何度目の孤独

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何度目の孤独

1人は慣れた。そう思い込むことにした。 夏休み明けの実力テスト。その中でも数学と理科のテストを終えた3年7組の教室は、生徒達の解放感でいつもより熱を持っている。 「問7の答え、356で合ってる?」 「最後の化学式が分からなかったんだけど!」 と、早速答え合わせをしている声を聞きながら、私は1人でお弁当箱を取り出していた。 今日のハンバーグにはチーズを入れたんだ。 テストを頑張るための自分なりの気分の上げ方。私は毎日、お弁当を自分で作っていた。それは高校1年生の時からずっと変わらず、もう2年半も経つ今ではかなり腕を上げたなと自負している。 答え合わせを一通り終えた生徒達は空腹に負けて徐々に友人同士で机を寄せ合ってお弁当を広げ出すが、その輪の中に私は入ることはない。というかそもそも、声を掛けられることもない。 私はずっと自分のお弁当箱と対峙していた。とろーっとするはずのチーズインハンバーグは冷めていたので、全然とろけてくれなかった。でも豚肉のオクラ巻きは見た目も可愛くできたし、玉子焼きは綺麗に焼き目が付いたし、カボチャの煮物は味がしみていて美味しかった。 食べ終えてお弁当箱を閉めた時、後ろから不意に声がした。 「なあ、次のテストって国語?」 「ううん、英語」 振り向いて斜め下を見ながら短く答えると、内藤大也は「英語かぁ」とだるそうに返事をした。前の黒板にも時間割は書いてあるけど、気づかなかったのかな。それとも誰とも喋らずに黙々と食べていた私に気を遣って、話しかけてくれたのかもしれない。 さて、残った昼休みは何をして時間を潰そうか。次の英語のテストに備えて勉強をするか、屋上へ続く階段へ行くか。 屋上の鍵はないから入ることはできないけど、そこへ続く階段は人が滅多に来ないので、1人になりたい時にたまに行く。秘密階段と名付けた、私だけのとっておきの場所だ。 よし、秘密階段で勉強しよう。 英文法のテキストを持って立ち上がった私に、内藤くんは「どこ行くの?」と聞いた。 「職員室。先生に質問しようと思って」 私は咄嗟に嘘を付く。 「マジで?俺、学年トップの豊田さんに英語のヤマ、今から教えてもらおうと思ったのにー」 さっき内藤くんが話しかけてくれたのは、あわよくば英語のテストで出そうなところを教えてもらおうとしていたからかもしれない。内藤くんが大袈裟に残念がるので、クラスから注目を浴びてしまった。 サッカー部の元キャプテンでクラスのリーダー的な存在の内藤くんは、いつも気さくに私に話しかけてくれる。 クラスで一番目立つグループにいた私にも、そこから脱落して一人ぼっちで彷徨っている私にも…。 まだ席に座ってお弁当を食べているクラスメイトと、英文法のテキストを持って立ち上がっている私。クラス中の視線に居心地が悪くなった私は、いそいそと駆け足で教室を出た。 向かう場所は職員室ではなく、秘密階段。
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