足跡機能

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今、日本中が利用しているSNSがJENIだ。 JENIが他のSNSよりも多くの人々に受け入れられている理由は、足跡機能がないことだ。 片平七海と与根岸葵と勝島優花は、蘭武大学のおしゃべりルームと呼ばれている蘭部屋で、3人ともカフェラテを両手に挟んだ、いかにも今時の女子らしいポージングで低俗な会話に花を咲かせていた。 「今までのSNSはさ、足跡機能あって誰かのページを見に行くの気使っちゃってたけど、JENIは足跡機能がなくてイイよね。」 七海は目をパチクリさせ、2人の目を交互に見ながら言った。 「わかる。ちょっと気になる人のページ見て私生活のぞけちゃうしね。ちょっと変わってる子のページとかある意味みたいもんね。面白半分で見に行ったりしちゃうかも。私。」 葵は笑顔で少し悪い顔をした。 「悪い子ー。笑、でも分かる。」 優花は笑いながら、葵の話に乗った。 「わかるんか。笑、A組の変わった子知らない?黒髪でロリっぽい小さい子。この前JENIで見つけちゃってさぁ。1人でランドとか旅行とか行っては自撮り写真UPしてるんだってー。やばくない?」 葵は、カフェラテから手を離し、机に置いていたスマホを取って、慣れた手つきでJENIを開いて2人に見せた。 「見せてみせて。」 七海と優花は、葵のスマホを覗き込んだ。 「ほんとだ...。一人で写ってる。しかもなんか全部の写真でこの子左に寄ってない??顔ちょっと見切れてるし。1人だから全部うつればよくない?」 2人はひきつった顔でスマホの画面をスライドさせていった。 「やばいね。周りからの視線とか気にしないんだろうね。加工もしてないし、全く盛ってないし。。ザ現実。って感じだもんね。」 七海がそういうと、葵と優花にウケて、3人で大笑いしたら、蘭部屋にいた他の生徒全員が一瞬にして七海達の方を見た。 --てか他人のそんな話どーでもいいから、私のJENI見て欲しいし、私のJENIの話して欲しいよね。話変えたいなぁ。 七海は内心話を変えたくてウズウズしていた。 「ねぇ、最近さぁいい感じに盛れるアプリ見つけたんだ。3人で写真撮ってJENIにUPしようよ。」 七海は、カバンから自撮り棒を取り出して、斜め上45度の角度から何枚も写真を撮った。 「じゃあ、写真おくるね。」 七海は撮った写真を2人に送った。 すぐに七海も葵も優花もスマホをみて俯いたまま無言になった。 --どれが私一番写りがいいかな。 --あ、これ角度も表情も私いい感じだな。 --葵ちょっと微妙な表情だけど、いいか。UPしちゃお。私のJENIだから好きなのUPしていいよね。 「今日は、葵と優花と蘭部屋でおしゃべり。3人で話すの楽しい。でも何話してたかは内緒。」 七海はコメントを添えて、自分のJENIに自分の写りが一番いい画像をUPした。
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