足跡機能

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夏休み明け、七海は学校へ向かった。 周りがざわついているのがわかった。 それもそのはず、七海は、流行の服をやめ、ジーパンにスエット、黒髪をひとつに束ね、化粧も辞め、斜めがけのキャンバスバッグで登校していたからだ。 教室に入るとみんなが七海を見てザワザワしていた。 七海は教室の一番前の席に座った。 1人の見知らぬ男が話しかけてきた。 「イメチェン?あんな投稿したら、いくらイメチェンしてもおれなら学校いけないわ。てかダサくね?ははは。」 「ちょっと待ってよ。」 七海は席から立ち上がった。 「あ?」 男は眉間に皺を寄せた。 「私は、JENIでみんながくれるイイネやコメントで自分を満たしてた。誰よりもキラキラしてるって優越感に浸りたかった。みんなに認めてもらえるように流行ってるものとか必ず買ったし、私にメリットがあるかだけ考えて人付き合いをしてた。 でも今思うとJENIにハマってる時は、足がない幽霊みたいだった。見えないものに振り回されて、自分が見えてなかった。みんなに私の人生が素敵だっていう証拠の足跡つけてよ。って、求めてしまってた。 でももう私はそのことに気づけたから、 これからは自分が好きな格好して、自分がしたいことして、自分の好きな人たちと生きる。自分が選んだものがみんなと違ってもそれでいい。そうすれば自分の人生に悔いのない足跡を残せるはずだから。」 七海は言い終えた瞬間、すっと足が地についた感覚がした。足に自分の身体と心がしっかりと載っている。それはずしっとした重さを身体に感じさせたが安心感のある重さだった。 「熱弁、だれかJENIにアップしてー。あいつやっぱり頭狂ってるわ。」 笑いながら教室を去る男とその友達。 七海は椅子に座った途端、素直に思ったことが言えた嬉しいさと伝わらなかった悔しさの両方の涙が堪えきれず溢れ出した。 「あの。」 男の声がした。 「まだ何か。」 七海は下を向いたまま声を振るわせた。 「いや、、。あの、、。今のかっこよかったです。隣座っていいですか?」 七海はそっと視線を上げた。 そこには薄顔で身長175cmくらいの細マッチョのイケメンが立っていた。 そのイケメンは、顔を真っ赤にし、七海の横にそっと腰を下ろした。
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