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七海は、今年の4月に世間では誰もが入りたいと願う賢く華やかな人が集う一流の蘭武大学に入学した。 七海が高校生の頃にJENIが世の中に広まった。JENIには、いつも新作のコスメや服を身につけて、高級なご飯を食べ、豪華な旅行をし、完璧な彼氏までいて、キラキラした生活を送っている写真をUPしている年上の女性たちがたくさんいた。七海はそういう雰囲気の女性たちをしらみ潰しに探し、フォローした。 --私もあんな風になりたい。あんな完璧になりたい。キラキラしてみたい。優越感に浸ってみたい。 七海は、絶対に蘭武大学に入ってやると、毎日12時すぎまで勉強し塾にも通った。高校生活の思い出と聞かれると勉強としか頭に浮かばないほどだ。そんな甲斐があってか、無事蘭武大学に合格することができた。 七海の家は裕福なわけでもなければ、貧乏なわけでもない普通のサラリーマンの父が大黒柱だ。親から高価なものや最新のものを次から次に買ってもらえるはずもなく、七海は、大学入学までの間、掛け持ちでアルバイトをしていた。昼はパチンコ屋、夜はファミレス。1ヶ月ちょっとで50万は稼げた。 そのお金を握りしめ、新作デパコスや新作の服やブランドのカバン、スマホ、ありとあらゆる流行りを買い揃えた。 髪型は、都心にある美容院に行き、顔周りで髪がフワッとしているがロングヘアーという一見聞いただけではどんな風か想像できないような流行りの髪型にしてもらった。もちろんカラーも流行りのアッシュ系で染めた。 俗に言う大学デビューというやつだ。 「こんな髪型になりました。担当は、築田さんにしてもらいました。似合うかなぁ?」 七海は慣れた手つきで斜め上45度の角度からの自撮りをし、コメントと共にJENIにUPした。 買い物をした時も、美容院に行った時も、お茶した時も、旅行した時も、ちょっとした生活のステキだなと感じた部分は、全部JENIにアップした。 七海は、もともと顔立ちも可愛らしく整っていて、スタイルも163cmのスレンダー体型だったことも功を奏したのか、JENIのフォロワー数は大学入学後、一気に増え500人を超えた。入学して2ヶ月くらいには、七海は学内では少し有名人になっていた。 「新作のアイシャドウつけてみました。めちゃお気に入りです。」 七海は、新作ブランドバッグを背景に映し、JENIに写真をUPした。 「七海、新作アイシャドウ似合ってる。かわいー。てか後ろのバッグなにー?買ったの?お金持ちだよね。本当うらやましい。」 「七海ちゃん、本当可愛いよね。いつもメイク参考にさせてもらってます。」 「七海さん、今日のはどこの服ですか?真似したいので教えてください。後ろにあるバッグも気になります。」 --私キラキラ輝けてる。 --私ってすごいのかも。 --私ってみんなの憧れなのかも。 --みんな私がうらやましいと思ってるんだ。 JENIに投稿した後のみんなからのイイネの数やコメントを読むたび、七海の自尊心は満たされた。 --まぁ、カバンは借り物だけど、濁して返信しとこーっと。
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