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ハグするときのにおいとは
、、、。やらかした。セーター着てくるの忘れた。
寝坊して焦って、勢いで家出てきてしまった。しかも、今日は体育ないじゃん。ジャージないよ。
このご時世で、毎時間換気なのに?...風邪ひこう。
「水無川はよー。って、今日薄着じゃね?」
うげぇー蒼井じゃん。隣3回目の男子。口悪いのに頭いいし、小さいことにも気づくからもてる。
私はこいつ苦手。
「蒼井、おはよ。寝坊して、セーター忘れたの」
とむくれる私を、じーーっと見つめて何かにひらめいたようにリュックをあさり始める。
意外とマメでちゃんとショップバッグに入れてあるパーカーを取り出し、私に着せてきた。
「風邪ひくから、それかしてやるよ。あ、あとそれ、俺とハグするときのにおいだから、覚えとけよ」
と満面の笑み。
一気に体温が上がった気がする。
慌ててお礼を言うと、手をひらひらしながら友達のところへ向かう蒼井。
その日は授業に身も入らず、慣れない匂いに囲まれていた。
P.S.
次の日、水無川から返されたパーカーのにおいが予想外にいい匂いで照れた蒼井がいたとか、いなかったとか。
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