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体温がいい
「いま、課題してるからちょっと待って」
ぎゅーしたいって呟いたら返事が返ってきて、
好きな人からの待てなんて、待たないわけなくて、
はーいといいながらソファーベッドに寝転ぶ。
横に付き合う少し前にりゅうがくれたサメキリュウノスケがいたので抱き締めて、なにをしようかとぼんやり考える。
そうだ、小説の続き、
スマホをポケットから引っ張り出して、小説を何気なく読んでいたのに。
まさかだった。
好きな登場人物が死んだ。
泣く所の話ではない。号泣した。しずかに目から水があふれていくけどそんなことより、続きが気になって歪む視界の中でひたすら読んでいた。
後ろからりゅうの’’おわったー’’という間延びする声にすら意識がいかない私にりゅうは近づいてきて、私の服をひっぱって
「さつき、ぎゅーは?」
その声と感覚で、慌ててそっちを向くと、
りゅうがっほんの少し驚いたように目を見開いてから私の腕の中にいるサメキに平然と声をかけ始める。
「サメキ、俺にその場所かわってくんね?いいの?やったー」
サメキがひっこぬかれて私の腕に潜り込んでくる。
「さつき、寂しくさせてごめん。課題のご褒美が良かったの」
としゅんとしながらいってくるから。つい笑顔がくちの端からこぼれる。
「りゅう、ごめんね。小説読んで泣いてた」
その言葉を聞いたりゅうの顔の温度が一気に上がる。
私の目尻に残る涙を拭いながら、
「忘れて。俺今すごい恥ずかしいこといった」
私は、noの返事の代わりに、
ぎゅーってしながら課題おつかれさまって声をかけた。
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