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悪魔の戯れ
二楷堂秀は、趣味の悪い遊びを好む。
例えば、メイドの誰それを惚れさせてこっぴどく振れば褒美をやるなど。
人間を使った気分の悪いお遊びは、常に私が実行しがたいものばかりを選んでくる。
私を使って遊んでいるのだとわかっていても、逃れる術がないから、最悪の遊びに付き合い続けるしかない。
『木野にディープキスでもしてきてよ』
なぜその麗しい口で、その言葉を口遊もうと思ったのだろうか。
気色の悪いゲームに勝手に乗せられて、お約束のように、木野と二人きりになる場を作られた。
吐き気がする。
そもそも木野は私の性別が女であることは知らないだろうが、知ってしまったときのショックは計り知れない。
キスなんて、できるはずもない。
ちっぽけな矜持など、秀を喜ばせる道具でしかない。理解しているくせに、つねにゲームは私の負けだ。
「今回も、僕の勝ちだね」
そもそも戦うつもりもない。この醜悪な遊びがはじまれば、どうあがいても最低の結末にしかたどり着かない。例えば——。
「じゃあ、僕の靴、舐めてよ」
例えば、そう。人間とは思えない扱いを受けるとか。
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