悪魔の恋人

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小恥ずかしいことを言ってくる男だ。 勝手に手を引いて、ソファに座らせてくる。 秀の瞳に弱い。私の弱点などお見通しだろう。悪魔が笑った。 秀のせいで、せっかく入れ替えられた使用人からも苦笑いを込めた、生ぬるい視線で見つめられ続けている。 屋敷の二階にほとんど引き込まれている姿を見たら、誰もがそんな目で見てくるだろう。 『藍田真尋さん、彼女は僕の婚約者だから、皆よろしくね』 勝手に言い張った瞬間に事実にするから、悪魔は恐ろしい。 「秀さま」 「秀」 「……秀、もうすこし離れて」 「いやだね」 「どうやったらそんなに横暴なまま成長できるの」 「僕に言わせれば君の諫言なんて、小鳥のさえずりみたいなものだね」 けらけらと笑って、放すつもりもなく、横から抱きしめてくる。 このままでいれば、抱き枕にされて昼寝に興じる未来しか見えない。私がこの部屋から出て別の仕事をすることを嫌っているから、機会を奪おうとしているのだろう。 呆れるほど面倒な悪魔だ。 「君が勝ったら、どうしてほしい?」 私が呆れても、気にするはずもない男が上機嫌で囁いてくる。 秀は、すこしずつ部屋から出るようになった。 体力的な問題もあると聞いて、まずは庭に出られるようにすこしでも屋敷の中を歩き回ってはどうかと提案したら、あっさりと通ってしまった。
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