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『真尋がそんなに僕を生かしたいなら、仕方ないね』
どろどろに煮詰まったジャムのような声だった。
秀が終わる日は、私の最後の日でもある。それまでは、この悪魔の趣味の悪い遊びに付き合い続けるしかないのだろう。
「そうですね、じゃあ、万全の調子にして、駅前でクレープでもおごってください」
いつかその日が来たら、私は泣いているだろうか。
今度泣くなら、嬉し泣きが良い。勝手に思っている私の頬を撫でた男が、自信たっぷりに笑った。
「あはは、それくらいお安い御用だ」
悪魔は、どれだけ時間がかかったとしても約束を守る誠実な男だ。
誠実さのかけらもない最低な男だと思っていたいつかの自分がおかしくて、一人で笑ってしまった。
「まひろ、何笑ってんの」
「ううん、べつに。今日もむかつくくらい見た目だけ綺麗だなと思って」
「中身も最高でしょ」
「さあ?」
私の存在意義は、悪魔の心臓に預けている。
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