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召喚
一瞬、まばゆい光があたりを包んだと思ったら、見知らぬ場所だった。
リツは周りを見渡す。
誰かの言霊の力で作り出されたように見えない。
まるでおとぎ話の世界だ。
ローブを着た複数の人間と、おとぎ話の騎士の様な人、それから明らかに高価と分かる服を着た男は貴族がそれとも王族か。
リツには判断が付かなかった。
床に何かの文様が書かれている。
友人のアラタであればすぐにこの内容を解読できるのかもしれないが、自分には無理だ。
それでも、と思いスマートフォン型デバイスで写真を撮ろうとする。
「しょ、召喚に成功いたしましたっ!!」
興奮気味に叫ぶローブの男たちを見て、これが演劇か何かだという可能性が無い事をリツは知る。
それから話すときに使っている言葉が自分たちの物を近い事を知る。
それであれば、自分の力が使えるかもしれない。
「あ、あー」
何か意味のある言葉を話そうとした瞬間だった。
自分の隣から声がする。
嫌な、気配と声。
ちらりと横を見ると、やはり。天敵というべき男が隣に立っている。
つやつやの髪の毛がリツの目に写った瞬間げんなりとする。
「ああ、大丈夫そうだ」
リツの隣に立った男はニッコリと笑みを浮かべたまま、この部屋の中で一番高価そうな恰好をした男の元に歩み寄る。
それから「ねえ、ここはどこ? なんでボクはここにいるの?」と聞いた。
その言葉を聞いた瞬間、高価そうな恰好をした男は、一瞬ぼーっとしたようになる。
それからうっとりと目を細めて言った。
「ここは、ヒスイの国。あなたたちは救国のために召喚された御子様です。」
それからその男はリツの天敵の男、レンの手を取ってうっとりと呟く。
「わたくしはこの国の王、アーサーです。御子、あなたのお名前は?」
レンがニッコリとほほ笑む。
こういうのは見慣れている。
あいつがそのつもりで話かけてああならない人間の方が少数だ。
「御子はお一人の筈だ」
ローブを着た人間のうちの一人がそう言った。
室内の人間がざわめく。
どうやら、俺たちが二人いることが想定外らしい。
「この方が御子に違いないだろう!」
王様が言う。
まあ、そうなる。いつもそうだ。もうあの人はレンを疑う事は出来ない。
彼の力はそういうものだ。
リツはため息をつく。
イレギュラーに対してこの場の人間がどういう反応をとるのか知りたかった。
レンがニッコリとこちらを見た。
それで、ここまでの行動がリツを陥れるためのものだと気が付いた。
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