宵っ張りの先人たちの足あとを辿るべからず

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「ねぇねぇ、めっちゃ雪降ってるよ!知ってた?」と彼女はぺちゃんこの鼻の頭を赤くして嬉しそうに言う。相変わらず眼鏡がずり落ちて鼻の上にのっかっている。 「うん。そうだね。すっごく寒いね。」 私は外廊下から外の空を見上げた。 「折角だしチョコ買いに行こうよ!」 「うん、あのね、みとさん。今、何時かな?」 みとさんは腕時計に目をやる。 「今?えっとね、あ、丁度二時になったとこやな」 私はもう一度、空に目をやる。吸い込まれそうな真っ暗闇から、白い雪がちらりちらりと落ちてきている。 「試験期間前の大学生は普通、」と私は用心深く口に出す。 「夜中の二時には寝てるか、詰め込みの勉強をしている時間だと思うんだけど」 「え?そうかな?」とみとさんはとぼける。 「私ら、試験期間前だったっけ?」 ダメだ、完全に現実逃避モードになってる。 「私たちは、間違いなく、試験期間1週間前の、大学生だよ」 私はきっぱりと言う。 みとさんがひるむ。と思ったら、その顔がぱぁっと明るくなる。 「そういえば池脇教授のテストさ、内容に自信なくてもカレーの美味しい作り方書いたら受かるっていう噂あるの知ってる?ちょっとキリオ君に、カレーの作り方伝授してもらおうかな」と、料理上手な共通の友人の名前を口にする。 「今から??」と私は口にしてから、慌てて言いなおす。 「違った、今から、とかそういう問題じゃなくて、そもそもカレーの作り方書いたら受かるとか都市伝説だから。ケンザキでさえ、そんなことやらないと思うよ」 そうかぁ、とみとさんは肩を落とした。 ケンザキ君でさえやらんのか、それはダメやなぁ。
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