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「要は、行き詰っているんだね?」
「まぁ、そうやな」とみとさんはしぶしぶと認めた。
「吹雪の中で、辿るべき足あとを見つけられずに遭難している気分やね」
なるほどね。私は肩をすくめた。
「まず第一に、試験は吹雪ではないからね。範囲も決まってるし、今からでも頑張ればなんとかなるよ。あと、足あとと言う意味では去年の問題回ってきてたじゃない。あれ丸暗記すればどうにかなるって。」
偉大なる先人たちの足あとを辿りたまえよ、と私は厳かに言い残してドアを閉めようとしたけれど、みとさんがガシッとドアを掴んで止めた。
「そんなん言わんと!付き合ってよぉ。もう一人で部屋で勉強するの限界やねん!」
今にも崩れ落ちそうなその必死さに、私はとうとう根負けして吹き出してしまう。
「分かった、分かった、いいよいいよ、付き合うよ」
チョコね、チョコ。分かった、チョコ買いに行こう。と口に出して言いながら、ドテラと靴下二枚を勝手口で脱ぎ捨てる。
「…ジャージはこのままでいいかなぁ。上にコート着ちゃえば分からないよね?」とみとさんを振り返ってみれば、彼女の足元はいつもの部屋着のぺらっぺらのズボンにつっかけサンダルだった。
どんだけ切羽詰まっているんだ。
やれやれ、と首を振って私はコートを羽織り、ポケットに財布を突っ込んでドアに鍵をかける。「さて、行こうか。でもその前に。」私とみとさんは顔を見合わせてにっこりして、迷いなく三〇四号室のインターホンを押した。
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