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エレベーターに4人で乗り込み、すぐに止まる。
扉が開き、目の前には4つのコースがあった。
「す、スゲー!長谷川ホビーショップのコースと同じくらいの大きさのコースが4つ!」
「し、知らなかったわ」
「しかも4つのコースはそれぞれ違う特徴のコースだ!フラットにウェーブを混ぜたコースと、テクニカルコース、ストレートコース…それに一番難易度が高そうなロングコースまで!」
「ふふ、驚いたかい?会員限定の四駆屋コースに」
「お、おっちゃんいったい何者なんだ」
「こう見えてもかつてはミニ四駆社にいた事もあってね。ミニ四駆社には偉大な2人の博士がいたんだけど、私はその中のひとり『紅二博士』に教わっていた事があるんだ」
優仁子と兵平は顔を見合わせる。
「し、知ってる?」
「い、いや。誰なんだろう」
「ははは。あまり有名じゃないからね。ミニ四駆開発の第一人者に紅二博士と木原博士っていうのがいたのさ。まぁ今は2人とも自分の弟子達に任せっきりだけどね…」
轟はあさっての方向を見るように目を細めた。
「今は彼らの弟子達が前線にいるわけだが、そのひとりの手無博士と私は同期だったんだ。結局後輩の風見博士があまりに優秀だから私も手無もドロップアウトしたわけだが」
「じゃあおっちゃんはクビになってここにいるのか?」
「いや、私は自ら退社した。後の事は風見くんとその後輩達に任せたのさ。私はこうやって自分で店を経営して直接子供達と触れ合う方がしょうに合っていたからね」
轟はそこでため息をついた。
「ただ…手無は問題を起こしてそのまま何も言わずにミニ四駆社から去ってしまったらしい。今はどこで何をしているのか」
「おっちゃん?」
「…おっと、そんな話はどうでもいいね。剛くん、君がどうしても君なりの決着をつけたいと言うならば、私に時間をくれないか?」
この日、剛達は轟にコースの事を任せて帰る事にした。なんと轟が長谷川ホビーショップのテクニカルコースを再現してくれるというのだ。
だから今剛にできる事は今のセッティングを完璧にする事。
だが実際にコースで走らせる事ができない以上、剛自身のセンスと想像力が試される!
「やってやるぜ…!」
剛は夜、なかなか向かう事がない勉強机に向かっていた。
もちろん勉強ではなく、セッティングのために。
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