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「て、てめぇら分かってるのか。このド素人が負けたらマシン取り上げられるんだぞ。自分が負けたわけじゃないのにだ!それでもいいのか!」
言っておきながら狼狽するノブオ。無理もない。どうせ誰も動かないと思っていたのだから。
「どのみち狙われたら取り上げられる可能性の方が高いよ」
「それに今まで僕達は立ち向かう勇気も出せなかった。そこの彼は逃げずに戻ってきたんだ」
「だからオレ達は彼に賭けてみる事にしたんだ」
レーサー達の間に小さいながらも結束が生まれていた。
それはまさに多数決の精神の発展。ただ、彼らも引くに引けない状態に変わりない。
「くだらねぇ馬鹿共の友情か!だったらこのオレ様がその友情ごとヤツを叩き潰してやるぜ!後悔するなよ!」
チラッとマックスTRFに目をやるノブオ。
「(確かにシャーシは最新型かもしれないが、あんな素組みのマシンじゃオレ様のブラックセイバーには勝てるわけねぇんだよ)」
いくら良いマシンだろうが経験値には差がある。しかもマックスTRFはあくまで素組み。ノブオには充分勝ち目があった。
「よし、じゃあやるぞ」
「ああ!」
まるで二人の間に火花が散るかのような空間。
今まさにコースに向かう二人。だが、そんな時ノブオのケータイが鳴り響く。
「っと…。誰だこんな時に!…げっ、か、母ちゃんッ!?」
なんとノブオの母親からの着信である。今までの偉そうな態度が嘘のように青ざめ、挙動不審となっていた。
「ちょ、ちょっとだけ待ってろ。いいか逃げるなよ」
明らかに様子がおかしいノブオは慌てて店から飛び出していった。どうやら母親が弱点らしい。いわばジャイアンのイメージだ。
唖然とする剛だったが、悪くないタイミングでの出来事である。
「何なんだあいつは」
「チャンスだよ剛君!ちょっとマシンを貸して!僕のパーツを譲るから今のうちに出来る限りマックスをチューンナップするんだ!」
兵平の言われるままマシンを手渡し、慣れた手つきでパーツを組み替える様子を見守る剛。
すると、他のレーサーもそれぞれパーツを持ってくる。
「これも使ってくれ!」
「役に立つか分からないけどこれも!」
「オレのも使ってくれ」
彼らに出来る精一杯の勇気ある行動。
こういった場面もまたミニ四駆の醍醐味なのだ。剛は感じていた。悪くない気分を…
最初は素組みだったマックスブレイカーTRFだが、ゴムリング付きプラローラーは9ミリのベアリングローラーに。ノーマルモーターはレブチューンモーターに。フロントにはFRPのプレートを装備してバランスを整えた!
そしてリヤにも11ミリのプラローラーを計4つ装着する事で、間違いなく素組み状態よりは性能が上がったはず。
重さは増してしまったが、あとは祈るのみ。
「頼みの綱になるM4チップも多分まだ何も学習してない状態だし、できる限りの改造はしたからあとはマックスの素の性能にもかかってるね」
「だな」
そうこうしているうちに、ようやくノブオが戻ってくる。
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