なみだの雨

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なみだの雨

 とあるひとつの集落(しゅうらく)がありました。  そこは緑豊かな谷にあって、みんな仲良く暮らしていました。  春にはいっせいに新芽がめぶき、夏はそれを育てます。  秋にはそこに住む住人にみのりをあたえ、冬はそれをたくわえに、春の準備にそなえるのです。  でも、そこにおとずれた外のできごとで、おだやかな暮らしにひとつの影を落としました。  不穏(ふおん)な音が「どぉん、どぉん」と、ひびくのです。  それといっしょに、星の光を消すように、お山のむこうが「ぴかっ」と光ります。  そして、豊かな緑は切りとられ、すこしずつ空気の味も変わりはじめた頃でした。  一匹の、赤んぼうほどの大きいうさぎがおりました。  うさぎは、集落に長いこと降りつづける雨に、悩まされていました。  歩くたび、雨は毛先にまあるい水てきを、いくつもつくりました。 「こりゃあ、まいったなぁ」  うさぎは空を見あげて、いいました。彼の畑が、この雨で台無しなのです。  この集落はみんな自給自足。足りないものは分け合って、助け合いながら暮らしています。    そこでうさぎは、知り合いのひとたちをたずねて歩いていました。
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