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「きみは『今』はまだ、こどもなんだ。きみの世界はまだまだちっぽけだし、頼りない。けど、きみが大人になるまでに、世界のありとあらゆるものを、知っていくんだよ」
「今だけじゃない?」
「きみには、明日もあさってもあるし、昨日もおとといもある」
うさぎは、はなをひくひくさせました。
「ねぇ、うさぎさん」
「なんだい?」
「わたし、雨の終わるところに行きたい」
「きみなら行けるさ」
「うさぎさんも、いっしょに行こう?」
「もちろん」
女の子はにっこり笑います。うさぎはひげを上下に動かしました。
お山のむこうの空は「ぴかっ」と光り、「どぉん、どぉん」がひびきます。
明日の生活に困っていても、あたえられるものしか、知ることができなくても、
そこには、ふたつの『いのち』がありました。
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