なみだの雨

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 すると、うさぎのとなりから女の子の声がしました。  女の子は赤いずきんをかぶり、手には小袋を持っていて、うでにはちいさなかごがあります。  小袋には、この集落では見かけない、変わったもようが刺繍(ししゅう)されていました。  そんな女の子を、うさぎはじっと見つめました。 「こんな日に、なにを売っているんだい?」 「火薬(かやく)よ」  女の子はうさぎに気づいていいました。 「でも、こんな大雨じゃ、誰も通りかからないし、火薬もしけっちゃうわ」 「火薬なんて、なぜ売っているの?」  うさぎは不思議そうにたずねます。  この集落にとって、火薬なんてものは花火職人ならともかく、必要はないはずなのです。火を起こすならマッチがあります。 「お父さんに『これを売ってから帰ってきなさい』っていわれたの。だから売らなくっちゃいけないの」  そういうと女の子はまた「いらんかねー、いらんかねー」といいました。  うさぎは真っ赤な目をまんまるにします。  雨は弱まる気配がありません。誰も通りません。女の子の白い手は、指先が赤く、しもやけています。  風で時折(ときおり)吹きつける雨つぶは、氷水のようでした。
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