0人が本棚に入れています
本棚に追加
女の子はしばらくすると「いらんかねー、いらんかねー」というのをやめました。
「ねぇ、うさぎさん」
「なんだい?」
「お山のむこうの光、きれいねぇ。そう思わない?」
笑顔でうさぎにいいます。
「お星さまでも、落っこちているのかしら。もしそうならきっと、山盛りのお星さまがあるにちがいないわね」
「そうかもね」
うさぎはいいますが、悲しそうに顔を前足でふきました。
「最近じゃ、空に見える星もずいぶんすくなくなった」
「うん」
「きみは……きみが売っているものが、なんの材料になっているか知っているかい?」
女の子は首をかしげて、持っている小袋を見つめます。
「知らないわ」
「ぼくも最近知ったのだけど、お山のむこうでは、人間を殺す材料になっているらしいよ」
「えっ」
そして女の子は光る空を見ました。
今まで見ていた光が、まるでちがうように見えます。
それはそれは、心が押しつぶされて悲しくなる、失望の光に見えました。
「おんなじお空の下なのに、わたしとおんなじひとたちが、わたしとおんなじひとたちに殺されているの?」
最初のコメントを投稿しよう!