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「そうさ。きっとこの雨だって、死んだひとたちの数だけ、ここに降っているんだ。だからやまないんだ」
うさぎは寒さに身を震わせます。わた毛のような毛が、逆立ちます。
女の子は、うさぎのそばにしゃがみました。
「ねぇ、うさぎさん。もっと教えて? わたしには、なにかできるの?」
「考えることさ」
「考えること?」
女の子は光を見ます。そして、雨つぶのひとつひとつをじっくり見ます。
「そう、考えるだけでもいいのさ。大人たちばかりを、信じてはいけない。信じるものは、自分で選ばなくちゃならない。そうじゃないと、本当のことがわからなくなる」
「わたし、わかりたい」
女の子は空を見あげて、うなずきます。
しばらくうさぎもだまって、女の子のようすを見つめていました。
「うさぎさんは、どんな生活をしているの?」
とつぜん、女の子が聞きました。うさぎは毛についた水てきを、ぶるぶると身をふるわせて、はじきました。
「ぼくは畑で野菜を作っているんだ。毎年、毎日、おなじことをくり返しながらね」
「それって、うさぎさんが好きでやっているの?」
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