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「好きかもしれないし、きらいかもしれない」
「どういうこと?」
女の子がたずねます。
「ぼくが、生きるために作っているのさ。だから、楽しいこともあるし、でも急に、いやになってしまうこともある」
「畑は、うさぎさんにとっての『いのち』なのね」
「そうだね。だから、これがぼくにとっての『しあわせ』なんだ」
すると、窓の光がぽっと消えました。のきから落ちてくる雨は、ちいさな滝のようでした。
お山のむこうの空が「ぴかっ」と、光ります。
「わたしは毎日、お家のお手伝いよ。だから、お勉強もしたことがないし、お友だちもいないの……しあわせって、よくわからないわ」
「きみは、たくさんほしいものが、あるんだね」
「うん、でもだめなの……わたしがお手伝いをしなくっちゃ。それにもし急に『いのち』がもらえても、きっとだめだわ」
「なぜ?」
「わたしは今の生活しか、知らないんだもの」
女の子は、赤いずきんの水てきを、ぱっぱっとはらいます。
「それなら、これから知っていけばいい。ゆっくりと、ゆっくりと、知っていけばいい」
うさぎは目をぱちっととじて、ひらきます。
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