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「まぁ! じゃあ、元々知り合いだったのね! それなら良かった」
喜ぶ澄子さんを見ていると、結婚しませんって言うのが申し訳なく思えてきて……
「じゃ、おばあさま、俺たち行くから」
そう言った社長は、スッと立ち上がる。
「ほら、澄香さんも」
えっ?
社長は、膝に置いていた私の手を握り、引き上げる。
私、今、社長と手を繋いでる?
ずっと好きだった社長と、今、手を繋いでることが恥ずかしくて、思わず手を引っ込めたくなるけれど、社長はギュッとしっかり握っているので、それもできない。
私は、形ばかりぺこりと澄子さんに頭を下げて、社長に引きずられるように部屋を後にした。
「あ、あの!」
家の外まで出て、ようやく口がきけるようになった私は、社長を呼び止めた。
「なんでですか? 社長なら、私なんかじゃなくても、いくらでも結婚してくれる人いますよね!?」
そう、社長は、ルックスもさることながら、仕事もできるし、誰もが憧れる存在。
玉の輿を狙って、アタックしては玉砕する女子社員は後を立たないし、取引先からも縁談を持ちかけられることは少なくない。
「俺は、好きでもない女と結婚するつもりはないんだ」
それだけ言った社長は、何事もなかったかのようにガレージにむかう。
えっ、それって……
私がその言葉の意味をちゃんと理解するのは、まだまだ先のお話。
─── Fin. ───
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