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「なぜ、泣く?」
「すみません。ちょっと、いろいろ考えちゃって」
ネコの死因や老婆の心傷を想像しただけで、涙を流す。
そんな聖に、駿佑は固い、だが響きは優しい声をかけた。
「泣くな。仇はとってやる」
「どういう意味ですか?」
それには黙って、駿佑はベンチに掛けた。
おずおずと、聖もその隣に座る。
そんな彼に、駿佑は語った。
「老婆に、依頼された。私は、掃除人だと言っただろう?」
「掃除人」
ハウスクリーニングだろうか。
(でも、元町さんの家はいつもきれいに片付いているし)
何を掃除するんですか、との聖の問いに、駿佑はもう一度人差し指を立てて唇に当てた。
「人間のクズを、掃除する」
内緒だぞ、とささやく駿佑に、聖は目を見開いた。
では、この人はミケを殺した人を……。
「まさか、人を殺すなんて」
それは、否定する駿佑だ。
「殺しはしない。ただ、もう二度と同じようなことをする気が起きないように、徹底的に掃除するんだ」
いわば、心を掃除する。
そう言って、駿佑は立ち上がった。
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