第一章 掃除人の男

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「待ってください、犯人は解っているんですか?」 「もちろんだ」  誰だろう。 「もしかして」  思わず口走った聖の唇に、駿佑は人差し指を当てた。  固くて太い、大人の男の指の感触だった。 「知っていても、誰にも言っちゃいけない。もちろん、私のことも秘密だ」  聖の頭の中には、隣のクラスの四人組が浮かんでいた。  授業妨害に、怠学。カツアゲに、暴言に、暴力。  散々悪さをするこのグループが、以前エアガンでミケを撃っていた記憶がある。 「あの。いつ掃除をするんですか?」 「今夜だ」  どうしよう。  見届けたい気がする。  そんな聖の心を見透かしたように、駿佑は首を横に振った。 「やめておけ」 「え?」 「気の弱いオメガが見たら、おそらく失神する」  それだけで、聖は駿佑の苛烈な仕置きを想像した。 「ここで私に会ったことは、忘れるんだ。いいな?」 「はい……」  しかし、忘れようにも忘れられない、強烈な印象を、駿佑は聖に残していた。
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