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「待ってください、犯人は解っているんですか?」
「もちろんだ」
誰だろう。
「もしかして」
思わず口走った聖の唇に、駿佑は人差し指を当てた。
固くて太い、大人の男の指の感触だった。
「知っていても、誰にも言っちゃいけない。もちろん、私のことも秘密だ」
聖の頭の中には、隣のクラスの四人組が浮かんでいた。
授業妨害に、怠学。カツアゲに、暴言に、暴力。
散々悪さをするこのグループが、以前エアガンでミケを撃っていた記憶がある。
「あの。いつ掃除をするんですか?」
「今夜だ」
どうしよう。
見届けたい気がする。
そんな聖の心を見透かしたように、駿佑は首を横に振った。
「やめておけ」
「え?」
「気の弱いオメガが見たら、おそらく失神する」
それだけで、聖は駿佑の苛烈な仕置きを想像した。
「ここで私に会ったことは、忘れるんだ。いいな?」
「はい……」
しかし、忘れようにも忘れられない、強烈な印象を、駿佑は聖に残していた。
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