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「植物園、か」
「ここに来ると、心が癒されます」
3月14日。
駿佑は約束通り、聖とデートを楽しんだ。
「温室で、世界の蘭展があってるんです。行きましょう」
「はいはい」
温かく湿度の高い温室には、所狭しと豪華絢爛な花々が美しさを競い合っていた。
「すごい! どれも、きれいですね!」
「こんなにたくさん、種類があるのか」
色も形も様々な蘭は、聖を喜ばせた。
夢中で美しい蘭を見る彼に、駿佑は気軽に声を掛けた。
「そんなに気に入ったのなら、一つ買ってやるぞ」
「え?」
会場の隅で、鉢植えの販売も行われているのだ。
こう言えば喜ぶかと駿佑は思っていたが、聖は考え込んでいる様子だ。
「嬉しいけど、どうしようかな」
「欲しくないのか?」
「蘭は、栽培が難しいんです。花が終わっても、次に咲かせられるかどうか」
珍しいな、と駿佑は聖を覗き込んだ。
「グリーンをあれだけ繁らせることのできる聖が、始める前から諦めるのか?」
「別に、諦めてるわけじゃ」
じゃあ、決まりだ。
駿佑は、販売コーナーへと足を向けた。
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