第十一章 ハッピー・ホワイトデー

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 夕食は外で済ませ、駿佑は聖のマンションへ帰った。 「僕、駿佑さんのマンションに泊まってみたかったな」 「明日の午後、ここに蘭が届くことになってるからな。諦めろ」 「午後なら、ちゃんと起きてますよ」 「果たして、そうかな?」 「ど、どういう意味ですか?」  今夜は寝かせてあげない、ということだ。  低く、柔らかい声で鼓膜を震わせられると、聖は腰がくだけそうになった。 「ぼ、僕、お風呂に入ってきます!」  逃げるようにバスルームへ向かう聖を、駿佑は笑顔で見送った。 「それもあるが」  本当の理由は、他にもあった。 (今の私は、洪隆会のヤクザなんだ。聖)  そんな人間の所へ出入りしていたら、どんな危ない目に遭うかしれない。  突然、組員が遊びに来る恐れもある。 (もう少しの辛抱だ)  この大きな掃除が終われば、破格の報酬が支払われることになっている。  それを最後に、駿佑は掃除人を辞める決心をしていた。 (聖のためだ)  刺青も消し、きれいな体できれいな仕事をする。  全て、聖のためだった。
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