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「痛いっ」
頭痛で目が覚めた。
「ああ、昨日は、飲み過ぎちゃった」
ベッドの中で、ぬくぬくと布団にくるまった状態だった。布団から顔を出し、目を開けたが、真っ暗な部屋の中で一人眠っていたようだ。
目がだんだんと慣れてきても窓など無さそうな様子。不安になって名前を呼んだ。
「弘明、弘明どこなの? 」
ドアが開いて、部屋の明かりが点灯する。
余りの眩しさに目を細め、徐々に周りが見えてくるとその部屋の異様な様子に言葉を失う。
窓の無い4畳半ほどの部屋の壁も天井も私の写真で埋めつくされいた。
「やあ、おはよう。結花は俺の事を嫌いになんてならないって言っていたし、結婚するって言ったから。もう結花は俺のものだね」
弘明の歪んだ口元と闇に染まる瞳が、私を囚える。
いつから私は弘明の罠に落ちていたのだろう。
壁や天井の写真は隠し撮りされたものばかり、汚れた部屋の背景が物語っている。盗撮の犯人は弘明だったんだ。
「これからは、結花のことは俺が全部世話をしてあげるからね。掃除が苦手でも心配しなくていいよ。よろしく、奥さん」
もう、この部屋から出れない気がする。
罠に落ちてしまったのだから……。
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