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※※※
その子供の獣人はルクス系で羊のようにもふもふとした毛並みをしていた。だが、よく見ると毛玉ができており酷いありさまだ。
「え、まさか……」
獣人の国は中心が王都、その周りを囲むように東国、西国、南国、北国とわかれており、第二王子であるヴァレリーと北国へ視察へと出かけたのは一か月前のことだ。
ブレーズがセドリックと知り合ってから北国へ偵察へ向かったのは三度目。
こんなに魅力的な男なのだから、自分の知らぬところでそういうことになる可能性はあるだろう。
その時に関係をもった雌との間に子供ができた?
もし、その通りだとしたらと頭が真っ白になり体が強張った。
「ちょっと、ブレーズまで皆と同じ反応しないでくれよ。視察を終えた帰りに王都と北国の境付近で行き倒れになっていて保護をしたんだ」
「え、そう、なの?」
セドリックの子供ではない、その言葉に安堵して唇がひくっと震え綻びそうになるがそれは抑える。
向こうはそれには気が付いていないようで話をつづけた。
「診療所に入院していて、今日、やっと退院となったのだが、記憶を失ってしまってな。家族を探す間、俺が面倒を見ることになったわけ」
「そうなんだ。こんにちは。僕はブレーズだよ」
セドリックの後ろに隠れている少年に視線を合わせると、恥ずかしさからか顔を引っ込めて耳だけだしている。
「……リュン」
今にも消えてしまいそうなか細い声で名を告げて、セドリックの足に抱きついた。しかも尻尾を股の間に挟んでいる。
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