獣人の子供

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獣人の子供

 ブレーズの親が始めた服屋は評判で、小さな店から大きなお店へと変わったとき、貴族からも服を頼まれるようになった。  自分も将来は店で働くつもりだったが、十二歳の時に今後の運命を左右するできごとがあった。  獣人が王宮へくるときは国を挙げて歓迎パレードを行うのだが、一度も見たことがなく獣人のことを話で聞くだけだった。  理由は簡単。親が忙しくて誰も連れていてはくれなかったからだ。本当は見てみたいと思っていたが忙しい親に言い出せずにいた。  そんなブレーズをパレードへ連れて行ってくれたのは兄であった。  すでに店で働いていたが一度は見てみたかったんだと休みをもらったという。きっとブレーズの気持ちに気が付いていたのだ。  パレードがはじまる前だというのに興奮していた。どんな姿なのか、話通りなのかと。  そして獣人の姿を見た衝撃を受けた。そう、あのまま死んでしまうのではないかと思ったくらいに胸が飛び跳ねた。  人のことは違う姿。気高く美しい毛並みと気品あふれる姿に目は話せず、パレードは終わった後も熱が冷めず、兄の手を握りしめていた。  それからというもの獣人の姿が離れず、獣人の国へと行き服を作りたいという夢ができた。  思いは歳を重ねても冷めることなく両親にそのことを相談すると、行って来いと背中を押してもらった。  獣人の国では人の子でも働くことができる。まずは入国許可書を取得し、商売許可書を手に入れなければならない。  しかも商売ができるのは男性のみで、獣人から推薦を貰わなければならない。
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