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恥ずかしいのではなく恐がっている。ブレーズはセドリックを見上げた。
「大丈夫だ、リュン。この世界には二種類の生き物がいる。俺たち獣人と彼のような人の子だ。何も怖いことはしない」
そう優しく頭を撫でると、セドリックを見つめた後にブレーズの方へと視線を向けた。だがまだ怖いのだろう。耳が垂れたままだ。
ブレーズは立ち上がり奥へと向かう。そして戸棚に飾ってあったものを手にしてリュンの元へと戻った。
「リュン、このことお友達になってくれる?」
リュンの前にうさぎのぬいぐるみを差し出した。
「え?」
「うさぎっていうんだよ」
「うさぎ?」
興味はある。尻尾が揺れているから。だが手を伸ばさずにセドリックを見上げた。
「お友達になりたいって。触ってごらん」
そっと手を伸ばして顔に触れると笑顔を見せ、怖い思いをしてほしくはなかったのでその表情を見てホッとした。
「リュン、よかったな。お友達だぞ」
「うん!」
すっかりうさぎのぬいぐるみに夢中のリュンを眺めながら、
「やはりブレーズのところに連れてきて正解だったよ」
という。どういう意味なのかを尋ねると、
「倒れているところを見つけて保護したといっただろう? 目を覚ました後に大人を怖がってパニックになったんだ。それのせいなのか自分の名前すらわからなかった。リュンという名は俺がつけたんだ」
恐怖で記憶を失った。そうセドリックは考えているようだ。
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