31人が本棚に入れています
本棚に追加
†
搭乗型幻霊装騎=【ホワイトイーヴィル】コクピット(通称・聖棺)内部。
『思念粒子残量二十八%。出撃の推奨はしません。回復も充填も不十分です』
若竹色のホログラフィック光学素子から構成されるHUDが、人間二人分ほどの空間を淡く照らしつつ、出力霊体=サリエルからの思念を文字として表示した。
「それでも構わない。みんなが戦っているのに、ただ見ているだけは嫌なの」
グレーの対Gスーツに身を包んだ、華奢な体躯の少女が答えた。
「こちら戦闘指揮所。聞こえるかい?」
C4INSTARが、不入斗博士の声を受信。
「こちらホワイトイーヴィル。感度良好です」
「今、君のバイタルをモニタリングしているけど、搭乗後の心拍数の平均値がいつもより高めだね? 身体は本当に問題ない?」
博士にそう聞かれ、少女は片手を胸に当て、徐に目を閉じる。
「少し、友人のことを考えていました。そのせいかもしれません」
「マジで無理は厳禁だからね? こっちでヤバイと判断したら、強制射出させるからそのつもりで。それから君への負荷を極力減らすため、【邪視】を始め、すべての権能の使用時間を半分とする。十秒だ。構わないね?」
「はい、博士。でも大丈夫です。ちゃんと一人で勝ってみせます」
少女は答えると、深く息を吸い、ゆっくり吐き出す。そして、閉じていた目を開いた。
「――もう、誰も死なせない」
その青藍の瞳には、彼女の強い意志が宿っていた。
最初のコメントを投稿しよう!