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二つのゴミ袋の口を縛った。「もうこれでさようなら」のお別れの意味を込めて。その袋を玄関口まで運びだす。ゴミ出しの日は月曜日――明日の朝だ。
部屋に戻ってきたわたしは、手にしたティディベアくんを、そっと置く。
床の上で気忙しそうに掃除を続ける、ルーロくんの上に。
ルーロくんの上に座ったティディベアくんは、ルーロくんの背中にちょこんと乗って部屋の中で移動を開始する。
真っ直ぐ行っては、止まって方向転換。また真っ直ぐ行っては、止まって方向転換。
まるでわたしの人生みたいに。くるくると。
わたしはわたしだ。
あいつと別れたって。
結婚から未来につながる人生プランが消えてしまったって。
わたしはわたしだ。
恋にやぶれたからって。
「じゃあ、仕事に生きるの!」って言えるほど魅力的な職場に恵まれなくたって。
わたしはわたしだ。
真っすぐ進んでぶつかった先で、仕方なく方向転換して、それでまた壁にぶつかっても。それが人生だし、わたしがわたしでいちゃ駄目な理由にはならないのだ。
だからさよならするものにはさよならして、残すものは残して。
今年もまた人生をやっていこうと思う。
お正月休みが明けて初めての日曜日。
随分とスッキリした部屋に、冬の温かな太陽の光が差し込んでいる。
ピピッという音が部屋に響く。掃除終了の合図。
わたしは音の鳴った方へと視線を下ろす。
窓際に広がる日だまりの中。
パナソニック製のルーロくんと北陸生まれのティディベアくんが仲良さそうに座っていた。
<了>
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