リンネ

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 わたしはたまらない眠気におそわれて、それ以上足を踏み出すことすらままならず、青草の上にくるんと丸まってそのまま眠りこんでしまった。  それからどのくらいの時間がたったのだろう。わたしはすっきり覚醒してぽっかりと目を開いた。ずいぶん高いところにいるようだ、しげる青草がはるか下の方に見える。  ははあ。ここはさっき赤ん坊が生っていた木の上だな。  ぼんやり下の方をながめるうち、わたしの意識は木の中に取り込まれ統合され、わたしと木の存在は一体化していった。  そうだ、これは輪廻の樹。  私はこれから実となり、再生され、そしてまた生まれ落ちるのだ。  すべてに合点がいくと気分もよく、私は木に身をゆだねて意識を飛ばした。  はるか遠くのほうで、湖に入る「ぽちゃぽちゃ」という音が聞こえてきた。それは、準備ができた者たちが湖の中に入り、下界へと戻っていく音だった。  わたしの番がいつになるのかわからないが、それまでは木にゆったりと身をゆだね、その時をじっくり待つこととしよう。  わたしはわたしであった事を忘れ、おだやかで素直な存在へと変容していくのを感じながら、邪気のない笑みを浮かべるのだった。 (了)
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