リンネ

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 わたしはどこから来て、これからどこへ行くのか。   ふと気がついた時には、わたしは湖の(はた)を歩いていた。足元にはやわらかい青草がしげり、はだしの足裏にサワサワと心地よい。  はて、わたしはここで、いったい何をしていたのだろう?  意識のとおい果ての方に、どこかの目的にむかう道がぼんやりと浮かんでいる。がしかし、それはあまりにも(おぼろ)げで、蜃気楼の向こう側で、儚い夢のように見え隠れする砂漠のオアシスのように、霞みがかってどうしても判然としない。  まあ、そのうちはっきりしてくるだろう。  わたしは深く考えることをやめ、立ち止まってあたりをゆっくりと見回してみた。湖はずいぶんと大きく深いようで、深緑の水面の奥は不透明で何も見えない。頭上には青いというより紺碧の、雲一つない空が、はるか彼方まで広がっている。辺りにはわたしの他に誰もいないようだったが、耳をすますと 「さりさりさり」  と、草の上を何かがひっそりと這うような音がする。わたしはしゃがみこんで、よくよく青草をながめてみた。すると草の間を縫うように、ちいさなちいさな人型の赤ん坊が、四つん這いになってたくさんはい回っていた。  ああ! 危うく踏んでしまうところだった。  わたしは脅かさないように気をつけながら、そのちいさな赤ん坊たちをそっと見守った。大きさはせいぜい2~3センチ、たまに8センチぐらいのすこし大きい子もいる。それらがみな 「さりさりさり」 と微かな音をたてながら、青草の上をはい回っている。目を凝らしてちいさい顔をよく見ると、ニコニコニコと、みんな楽しそうに笑っている。赤ん坊たちの邪気のない笑顔を見て、わたしもつられて思わずニッコリほほ笑んだ。
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