あいたい

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あいたい

「今年はまた、ずいぶん見事に咲いているね」 「うん、なんでも寒暖の差が激しいとよく咲くらしいから、それでじゃない」 「なるほどね」  私の花を眺めながら、人間たちはそんなことを言っています。しかしそれは、間違っています。私は想念として存在する女性のために、あの(ひと)を呼びたくて力をふりしぼり、いつも以上にたくさんの花を咲かせたのです。  花が咲けば人が来る。人が来れば彼も来る。きっと。  私も今では、あの(ひと)を求めてやみません。なぜなら女性のからだは、いまや私の足を伝ってすみずみまで行き渡り、私の美しい花びらのひとひらひとひらを作っているのですから。私と女性は文字通り一心同体となり、私を見ることは、彼女を見ることになるのですから。  しかしそれは同時に、女性の残された想念のかけらのように儚くせつなく、永くは保たないものでもあるのです。気が付いた時には花びらは風に舞い上げられ、為す術もなくあたり一面に散乱してしまうでしょう、女性の散らしたであろう、あの鮮やかな血しぶきのように。    ずいぶんと長い間、私はここにいるのです。そして私はここで、今日もしずかにずっと待ち焦がれているのです。私の愛しいあの(ひと)を。 了
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