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とある発明家がいた。
発明をすることが生きがいで、それを邪魔されるのを何よりも嫌っていた。
ある日、発明家が研究所で作業をしていた時の事だ。
ふとした事で腕が積み上げていたガラクタに触れ、大きな音を立てて崩れてしまった。
「ああ、しまった」
発明家は思わず叫んだ。
それほど広い研究所では無いにも拘らず、部屋の中は物で溢れかえっていた。
発明とは一朝一夕で出来るものではない。
一つの完成品の前には、いくつもの試作品や失敗作が出来るのだ。
そうしたものを発明家は部屋のあちこちに積み上げていた。
作業をするスペースを確保するためには、崩してしまったそのガラクタを片付けなければならなかった。
「こんな事をしている亜間に、アイデアが逃げてしまうかもしれない。これは大きな損失だ」
けれど発明家は部屋を徹底的に片づけようとは思わなかった。
そんな事をしている暇があったら、発明に取り組みたいのだ。
「そうだ。掃除してくれるロボットを作ればいいのだ」
色々な物を作ってきた発明家にとって、ロボットを作るなど容易い事だった。
一週間ほどでロボットは完成した。
家自由をピカピカにするため、あらゆる掃除の機能を搭載していた。
ゴミの分別も自動でやってくれる。
さらに自分で学ぶ機能も搭載しており、掃除の効率をどんどん上げていくようにも作られていた。
「ようし、いよいよ動かすぞ」
発明家がロボットのスイッチを入れると、小さな駆動音と共にロボットは顔を上げた。
「ハジメマシテ、オソウジろぼっとデス」
「分かっている。私が作ったのだからな」
「ナニヲイタシマショウカ?」
「何って掃除に決まっている。家中を徹底的に掃除してくれ」
「カシコマリマシタ。テッテイテキニオソウジイタシマス」
ロボットはそう言って動き始めた。
拭き掃除に掃き掃除、ガラクタの処分など、ロボットは休みなく働いた。
発明家は広くなった研究室でのびのびと発明を続けた。
何しろ、失敗作も用済みの試作品も、その辺に放り出しておけばロボットが片付けてくれるのだ。
ある日、発明家はいつもの様に失敗作を研究室の片隅に放り出した。
その途端、ロボットが発明家に襲い掛かってきた。
ロボットの力はすさまじく、発明家はあっという間に捕まった。
「お、おい、何をする!?」
「コノイエヲキレイニスルタメニ、モットモジャマナモノヲガクシュウシマシタ」
発明家を持ち上げ、ロボットは動き始めた。
「ハイジョシマス」
「うわ、よせ!!」
博士を特大のゴミ袋に詰め込んだロボットは、そのままゴミ捨て場にそれをポーンと放り投げた。
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