蜘蛛

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 今日もお兄さんのバンドのメンバーが来ました。この家は田んぼの中にポツンとあるので楽器を鳴らしても近所迷惑にならないのです。 「蜘蛛を殺すスプレーがあるらしいぞ」  ドラムの男の子が言いました。そんな恐ろしいものがあるのですね。 「昆虫でも生き物を殺すのは嫌なんだよ。それに蜘蛛がいると小さな虫がいなくなるだろう。人間に何かするわけじゃないし、そっとしといてあげようよ」  お兄さんは優しいのでそう言います。その通りです。僕たちは人間に危害を加えないのですから。怖いのは人間のほうです。噂で聞いた話だと昔、戦争というものをしたみたいです。食べもしないのに殺し合いをしたんだそうです。ルーシーがこちらを見て目配せをしました。 「やっぱりお兄さんはいい人だね」 「ああ、そうだな。弟も優しいんだよ」  弟は部活が忙しいのか帰ってくるのが遅いのですが日曜日になると庭でサッカーボールを蹴ります。弟の友達も来ます。そういえば弟は来年が高校受験です。遅くまで電気が点いているから一生懸命に勉強しているのでしょう。何処の高校に行きたいのかなと僕は考えます。お兄さんは進学校だと聞きました。
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