蜘蛛

　今日は雨です。蜘蛛の糸は水をはじきますが雨は嫌いです。でも秋は雨が多いので我慢です。それにしても早く交尾をしなければなりません。ルーシーはお兄さんとはたまごが作れないのですから僕に愛情を向けてくれてもいいでしょう。
　雨の日曜日なので弟は暇そうにリビングから外を見ています。僕の居る位置からギリギリ弟の顔が見えます。ルーシーが言いました。
「お兄さんもカッコいいけど弟もいいね。目が大きくて鼻が高い。お兄さんによく似てる」
　まあ、それは当たっています。あの二人はお兄さんや弟の連れて来る友達の中でも一番に顔が整っています。彼女はいないのでしょうか。僕は気になって家の中を探ってみようと思いました。網から離れて少し開いていたキッチンの窓から家の中に入りました。お母さんが掃除をしていました。
「理来(りく)も自分の部屋を掃除しなさい。漫画本が散らかってたよ」
　理来というのは弟です。弟は生返事をしました。