1.悪役令嬢、せんべい布団で目覚める

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1.悪役令嬢、せんべい布団で目覚める

オルコット公爵家令嬢、カレン・オルコット。貴殿を国外追放に処す!」 この宣言を持って、わたくしは本物の『裏切りの令嬢』になった。 「ん…んぐ…ぐぬぬ」 朝日が瞼ごしにつらぬいてきて、顔をしかめる。なんだか、ずいぶん寝てしまっていたようだ。チュンチュンと、聞き覚えのない鳥の声がする。 「い…いけない!こんなに寝過ごしてしまったら、王子の未来の妻として失格だわ!」 そこで、ハタと気づいた。 わたくし、昨日婚約破棄されて国外追放の処罰をうけたんだったわ… 鼻の奥がツンとする。シルヴィオ王子の顔が浮かぶ。わたくしがいなくてもやっていけるかしら…? そんなことを思いだして、わたくしは 「まぁでも、せっかく婚約破棄になったのだし!二度寝してしまおうかしら!」 …わくわくしてきた! 王子の未来の妻として、抑圧された生活を送っていた。 別に苦ではなかったけれど、物語の中の放牧的な生活に憧れていたのだ。 「では、二度寝の世界におやすみなさいませ~!」 バフンとベットに倒れこむ。 ガンッッ! 頭をしたたかに打つ。 「痛い!スプリングが死滅しているわ!」 頭をさすって、急いで身を起こす。 そして、眠たい目を開けると… 朝日がはいっていたのも当然だ。カーテンはぼろぼろで、所々縫ってあるが圧倒的に布地が足りない。部屋は狭く、ドレッサーも何もなく、茶色い箱が置かれているだけだ。 質素を部屋にしたらこうなりました、という感じの… 「どこかしら、ここ!?」 全く見知らぬ部屋にいた。 誘拐!?…でも今のわたくしに誘拐する価値はないし… よくよく見ると、自分が今まで寝ていたのは豪奢な天涯つきのベットではない。床のうえに置かれた薄っぺらい布だ。 寝ている間に異国に着いた…? あれ?でも昨日、わたくし馬車から落ちて…? ……… …深く考えるのは、やめた。なんか、怖くなったからだ。 昨日から色々ありすぎて疲れてるのよ! 「二度寝の世界よごきげんよう~!」 再び布団に倒れこもうとした、その時 「ねーちゃんが起きた!」 子供が泣きながら飛び出してきた。誰!? 「よかった!丸一日眠ってたんだ!」 黒髪の美しい子供だ。どうやら自分を心配しているようだ。 いや、それよりも 「わたくし、1人娘なのだけれど…?」 ねーちゃんとは、市井で姉、という意味だろう。 婚約者のシルヴィオ王子は、自分にとって弟のようなものだったけれど、目の前の子供は彼に似ても似つかない。 シルヴィオ王子は氷のような銀髪にアイスブルーの瞳だった。 目の前の少年も美しくはあるが、目のいろも髪も黒い。 「ねーちゃんが頭を打って記憶そーしつになってしまった…」 「だから姉ではないのだけれど」 でも、ずっと弟が欲しかった。 もしかしたらここは天国で、わたくしは死んでて、神が願いを叶えてくれたのだろうか? 「やっぱり姉とよんでもいいわ!さあ!存分にお姉さまとお呼びなさい!」 子供は急に言い分を変えたわたくしを気持ち悪そうにみやる。 「家みたいなビンボーでお嬢様ごっこしてどうすんだよ。お前、ホントに夏蓮ねーちゃんか?」 どうしよう。ねーちゃんからお姉さまに一段あげるつもりがお前にさがったわ…。 ってそれより、 「ここはどこなのかしら?」 「家だよ!一昨日の夕方学校で倒れてたのを先生が運んできてくれたんだよ!」 混乱してきた。ここはどう見てもオルコット家じゃないし、わたくしは学校に通っていない。 やはり、異国だろうか? わからないことはすぐに聞くことにしている。 「ここはなんて国なのかしら?」 少年は心底呆れた表情をしたものの答えてくれた。 「にっぽん、日本!わかる?」 「うーん…聞き覚えがあるような…」 少年がホッとしたような表情になる。 「無いような…?」 少年がガックリくる。 一応賢いで通った令嬢だ。プロメリア王国を含めた世界の地理は把握している。ニホンなんて国、無い。 でも聞き覚えがあるのよね… 悩むこと三十秒 ピキューンと思い出した! 異世界だ。日本は異世界の国の名だ。 聖女をよく排出する国。確か今の聖女も日本出身だったわ! 「うそ…!?」 「ちょっ待てよ!」 少年の静止を止めて ぼろぼろのカーテンをサッと開ける。 晴天の空の下、鉄の塊が走っている。ガラスがふんだんに使われた、見知らぬ町。本でしか読んだことのない、日本… そして、驚くべきことがもうひとつ。 窓にうつる自分の姿は腰までの金髪に紅い瞳…ではなく、肩までの黒い髪に黒い瞳。 驚きのあまり、ベット(薄い布)にたおれこむ 二度寝は出来そうにない。 「わたくし…異世界転生してしまったの!?」
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