第十二話 終わりの日

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「卑怯な手を使われてるのに、先輩呑気過ぎますよ。あのギター弾いてるの、ジュニアのギターコンテストで優勝したことある奴ですよ」 「へぇ、そら凄いな。けど、卑怯とはちゃうやろ。楽器は別に、禁止されとるワケやないし。なぁ?」  清虎は確認するように陸を見る。陸は忌々しそうに顔をしかめて頷いた。 「楽器は一台まで認められてて、例年どのチームも大太鼓を使うことが多いかな。まぁ、吹奏楽部の部員がトランペットやサックスを吹いた年もあったけど。でもさぁ、部活で使ってる楽器とわざわざ家から持ち込んだ楽器は、ちょっと違う気がするな。抗議してもいいんじゃないの」  至極まっとうなことを言ったつもりだったが、清虎は涼しい顔で首を横に振った。 「なんて抗議するん? 『管楽器ならええけど、エレキギターの音は派手過ぎて勝てそうもないからズルいです』言うん? ええやんか。それくらいのハンデ、くれてやれ。普段、金貰ろて舞台立ってる俺が出るんも大概やろ」  清虎が当然自分の意見に賛同してくれると考えていた陸は、驚きながら反論する。 「そんな、悔しいじゃん。折角今日まで練習してきたのに、邪魔されるみたいで」 「向こうかて今まで真剣に練習して、その上で策を練ってきたんやろ。それが多少強引な手であったとしても。応援団の発表は、赤、青、白の順やんな? メインの演舞は同時にはならんし、邪魔されることもないやろ」 「でも最後には応援合戦を、全チーム一斉にやるだろ。このままじゃ、青組が一番目立っちゃうよ」 「そないなこと、させへんよ」  憤る陸を清虎が静かに見下ろし、低い声で言い切った。その自信に満ちた物言いに、陸も後輩も息を呑む。根拠などあるのか解らないが、それでも清虎の言葉には不思議な安心感と説得力があった。  委員会の仕事を終えた哲治と遠藤が、校庭を突っ切りこちらに向かって駆け寄ってくる。
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