結婚いたします。

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二条先生って、ぱっと見は行動力なさそうに見えるんですけど、皆さんご存知の通り、やるときは徹底的にやる人間なんですよね。 「結婚しよう。」 と言った当日中に、二条先生はサクッと婚姻届を印刷。それを私に突き出して「悠夏さんの親御さんに挨拶させてください。」って言ってきたんですけど、こころなしか有無を言わせない感がありました。はい。 そんなわけで、週末に私の両親に挨拶する手はずを整えた。 いちおー、不安だったんですよ。 だって両親には、派遣切りにあったことも言ってなかったし、秘書(家政婦)として働いてることももちろん言ってなかったし、そもそも男性とひとつ屋根の下で暮らしてることも言ってなかったし、とにかくなーーーーーんにも言ってない状態。 その上、この結婚は恋人としてお付き合いしてる期間もほぼ無しの状態なわけで、両親からしてみればまさに青天の霹靂。 真面目な両親が白目剥くほど驚いて、難色を示したら…と、心の隅っこの方で不安だったわけです。 「サイン頂けないでしょうかっっ!!!!!」 結論。 私が心配してた時間を返せ。 私の両親、私が就職して家を出てから二条先生の小説にはまったらしく、夫婦揃って二条蒼士のファンになっていた。 で、娘が結婚したいといって連れてきた相手が二条蒼士だとわかった瞬間、もう娘そっちのけですよ。 父さんは小説の感想を本人に向かって熱く語り、母さんは握手してもらったあと感動のあまり失神しかけ、本にサインを書いてもらい、各々ツーショットも撮影いたしまして、大変満足な二条蒼士先生握手会でした、 って、ちがーーーーーーーう!!!!! 私は!!!! 結婚の報告をしにきたんだってば!!!!! 「父さん母さん!!!先生は父さんと母さんに結婚の許可を貰いに来たの!!娘さんを頂けないでしょうかって話しにきたんだってばっ!!!」 私が座卓を叩いて憤慨すると、父さんがいきなり隣にやってきて私の頭を引っ掴んだ。で、強制的に父さんと一緒に頭を下げる羽目に。 「ちょっ、父さん!!?」 「むしろどうぞ、こんな娘ですが頂いてやってくれないでしょうか……!!!」 「はぁ!!?父さんっ、」 「クーリングオフ不可ですけど大丈夫ですか!!?」 「母さんんんんんん!!!??」 娘を嫁にやるときに母親が「クーリングオフ不可です」とか普通言う!!?私可哀想すぎない!!? 一方の二条先生は「お嬢さんをいただけないでしょうか。」ってお願いする立場のはずなのに、優雅にお茶を啜ってます。 どういうこと!!? 「二条先生!!何か言ってくださいよ!!」 「クーリングオフ不可で大丈夫ですよ。問題ありません。」 「そういうことじゃない!!!」 そんなこんなで、挨拶は無事に終了。
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