結婚いたします。

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待って。 冷静に待って。 あの人がお姑さんとか冷静に考えて地獄では???????? 「す、すぇんすぇぇっ、」 「どうしましたか未来のお嫁さん。顔が引きつってますよ。ほら笑って。」 「無理ですぅうううう………!!!!!」 目の前にはいつもの二条家玄関。 いつみてもご立派な造り。 いやそんなことを言っている場合ではなく。 来てしまいました、二条の家へ…!!! あのあと、お母様の存在を思い出して石化する私の隣で、先生は平然と尊さんに電話。 「あ、兄さん。結婚したいと思う人を連れてそちらに伺いますので宜しく。」 『ちょっと待て日時とか色々言え馬鹿』 尊さんとこんな会話をいたしまして、トントン拍子で話は進み、その二日後にはご挨拶の流れと相成りました。 で、今日がその二日後。 「先生っ、お、お母様いらっしゃるんですよね!!?」 私が小声で再度確認すると、先生はゆったりと一笑。 「ええ、います。」 詰んだぁああーーーーーーーーー!!!!!! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理っ、絶対嫌味言われる!!! だって私、家柄も何もない一般庶民の女なんですよ!!?京都の呉服屋のお嬢様だった沙奈恵さんでさえあんな扱いだったのに、私なんかが嫁に来るってなったら、あのお母様のことだから、それはもう、そーーーーーーーーぜつに嫌味ぶちかましてくると思うんです!!! ああ死んだ、無理死んだ、終わった。 「せ、先生、あの、お、お助けを、」 「何を言ってるんでしょうか、ほら入りますよ。」 「え!?待っ、心の準備がまだっ、」 私の話を無視して、カラカラッと引き戸を開けた先生。その音を聞きつけた沙奈恵さんがパタパタと軽い足取りでやってきた。 「響さま、それに悠夏さん、ようこそいらっしゃいました。」 …ん? 先生の影に隠れていた私、沙奈恵さんの格好をまじまじと観察。 前見たときは無地の質素な着物を着て、髪をひっつめていただけだったのに、今日は淡い黄色の小紋を着てます。 それに、髪。 まるで旅館の若女将のようにきれいに黒髪を結い上げて、紋かんざしを挿していた。 え、まって、すごく素敵。 お母様はとにかく煌びやかだったけど、沙奈恵さんの出で立ちは控えめでありながら可愛らしいというか… 「沙奈恵さん、お着物が…」 私が思わず声をかけると、沙奈恵さんは恥ずかしそうに肩をすくめて笑った。 「こういった着物も着れるようになりましたので…。」
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