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手に触れるのも恐れ多いほどの、立派な着物。
そんな着物を着ていい、と?
「本当に質の良いものは、何年経っても色褪せない。」
尊さんはこう言いいながら着物の傍へ来た。
「もちろん、柄や光沢は悠夏さんの好みがあると思うので、そういった点で他に気に入るものがあれば、そちらにして頂いて結構。
ただ、」
それは、二条としての自信か。
尊さんは目を細めて、余裕の表情を浮かべた。
「この白無垢を上回る程の上等なものは、滅多にありますまい。」
そんなの、言われなくても分かる。
この白無垢、…本当に凄い。
「悠夏さん。この白無垢、名前があるんですよ。」
私がじいっ…と白無垢を眺めていると、二条先生が声をかけてきた。
えっ、名前!?白無垢に名前が!?
「そ、そうなんですか!?」
驚く私の隣に来た先生は、白無垢をじっくりと観察する。
「そうです。この白無垢は神社で清めの祓いをしてもらっていて、名は『桜扇珀』といいます。」
ひ、
ひぇえええ…!!!
知らなかった、白無垢って名前がついてるのもあるんですね、ひぁあぁああああ…!!!
「あえて金糸や銀糸を使わず、“白であること”にこだわった白無垢なのですが、こんなにまじまじと見たのは私も初めてです。」
そ、そうなの?
二条先生ですら、滅多にお目にかかれないの?
「ほ、本当にこんないいモノ着ていいんですか…」
私がブルブルブルしながら言うと、沙奈恵さんは嬉しそうに頷いた。
「はいっ。私にとって、悠夏さんはそれくらい大切な人です。悠夏さんがいらっしゃらなければ、今の私はありません。」
わわわ、なんか私すごい大仰に言われてる、大したことしてないのに…!
とはいえ、
これ、着て良いのなら、
ぜ、
ぜひ着てみたい…!!
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