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『渚はレストランで働いてるの?』
最初に会った時、そう聞かれた甘い声を今でも覚えている(ちなみに渚は俺の名前)
『うん』
『レストランで何してるの?』
『デミグラスソースをコトコト煮込んでる』
『コトコト?笑える。でもなんか似合ってるね』
『そうかな?』
『トロ火で温めていくタイプ?俺は焔だから火力が強いタイプ』
『なんだよそれ』
変な事を言う変なやつ。
でもわかる気がした。
まさに俺と焔はそういう感じだった。
俺と焔の恋愛もそういう感じだった。
あいつの気持ちは強火にかけられた中華鍋のようにあっという間に熱くなり、すぐに冷めてしまった。
俺の気持ちはトロ火にかけられたデミグラスソースのようにじっくりコトコト煮込まれて、濃くなってしまった。だからなかなか冷めない。
そう。未だに冷めていないのだ。
ポロポロと涙が流れて鍋の中のデミグラスソースの味がまた濃くなっていく気がした。
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